二子玉が一躍、若妻たちに人気を博するようになったのは、“金妻”で有名なドラマ『金曜日の妻たちへ』(1983年・TBS系)が大きい。
世紀をまたぎ、人妻の欲情が渦を巻く。
タワーマンションが林立する。
「最近、ここから飛び降り自殺があったらしいです」と早川副編集長。
どんな街でも悩みは尽きない。
表札のない街
二子玉から切り通しを抜けて上野毛の超高級住宅地に。
この地には東急創始者・五島一族の豪邸がある。
緑が豊富で静謐、壁が延々とつづく。
不思議なことにこれだけの超豪邸なのに、大きな玄関に表札がない。
いや、超豪邸だからこそ表札がないのだろう。
地元では超有名な人物だから表札を出す必要もなく、防犯上からも苗字を出すことを控えているのだ。
環状八号線沿いにはラーメン二郎、社民党ポスターもある。
東京オリンピックが目前に迫った1964年8月24日、この街で暮らす高島忠夫・寿美花代夫妻の第一子が殺害される、という痛ましい事件がおきた。
犯人は住み込みで働く17歳の少女だった。少女は高島夫妻の大ファンだったが、第一子ができてから自分に冷たくなったと錯覚し、愛情を独占しようと第一子を殺害したのだった。俳優の高嶋政宏・政伸の兄になるはずの子どもの不幸な死だった。
高島忠夫は1990年代後半、鬱病を発症。闘病生活を送る。
愛児の殺害と鬱病の発症とは関係ないはずだが、つい思い出してしまう。
2019年6月26日13時1分、老衰のため、自宅にて88歳で死去。
セレブタウンの犯罪
2016年度、東京23区でもっとも犯罪件数が多かったのが意外なことに、世田谷区だった(2位新宿区、3位江戸川区)。
犯罪はスラム街で多発する、という固定観念があるが、犯罪は高級住宅地を避けて通るわけではない。
成城からほど近い祖師谷公園の一戸建てで、2000年12月30日夜発生した世田谷一家殺害事件はいまだに未解決だ。両親と幼い長女(8)・長男(6)までも殺害するという陰惨極まりない事件であった。
この事件最大の謎は、犯人の動機である。
物盗り説、怨恨説、快楽殺人説……。
動機は定かではない。