阪神・大山悠輔のお父さんがやっているそば屋さんは、まるで大山のようだった

文春野球コラム フレッシュオールスター2021

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最後の最後まで、本当にあったかい店だった

 大山とお店の気遣いに思いを馳せていると、先ほどの店員さんが親子丼セットを運んできてくれた。

親子丼セット ©とびたつばさ

 四角いせいろからそばの上品な香りがただよってくる。茹で具合は少し固めにも思ったが、噛めば噛むほどそばが持つ本来の風味が口の中に広がってくる。まるで、一見地味に映るがチームへの貢献度は半端じゃない、大山のバッティングのようではないか!

 次は親子丼をいただく。これも美味しい。甘い玉ねぎが大きくてアクセントになっている。そばと親子丼、交互に食べる箸が止まらない。両方美味しいとは恐れ入った。まるで、本職の三塁のみならず、一塁や外野の守備もそつなくこなすユーティリティプレーヤー・大山のようではないか!

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 大満足のまま会計を済ませて店を出ようとした時、大山のお父さんがレジの前を通りかかった。

「あの……僕、阪神ファンで、大山選手のこと応援してます!」

 本当は色々話したいことがあったが、緊張でうまく言葉が出てこなかった。

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「ありがとうございます。またいらしてくださいね」

 お父さんは優しく答えてくれた。顔がクシャっとなって笑う感じが、大山によく似ていた。

 最後の最後まで、本当にあったかい店だった。

 駅で帰りの列車を待ちながらスポナビの一球速報アプリを開くと、ちょうど大山の打席だった。相手はあの田中将大だ。初球を見送って2球目。

「HOMERUN!!」

 スマホには「右本塁打 +2点 145km/h ストレート、ポール際」の文字。ここまでノーヒットに抑えられていたが、大山がその一振りで試合の雰囲気を変えた。(さすが大山! これぞ4番だ! お父さんのおそばも美味しかった!)

 僕は心のなかで力強く呟いた。青空のきれいな、実に気持ちの良い昼下がりだった。

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