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「辞めなきゃいけないのかな」から「辞められないな」へ

―― 子役の方ってある年齢にさしかかると、将来そのまま俳優を続けるのか、学業を優先するか、必ずぶち当たると思うんです。そういう悩みはあったんですか。

伊藤 ありましたね。高校の頃は、実はそんなにたくさんはお仕事をしていないんです。オーディションに行って落ちて、行って落ちてという感じでしたから。そんな中、そろそろ進路希望を出す季節になって、私は希望欄に「ありまっせーん」みたいな感じで書いて出して、怒られてたわけです(笑)。俳優という仕事を辞めたいと思ったことは特にないんですけど、この時ばかりは「辞めなきゃいけないのかな」っていう気持ちが湧きました。

 

―― そういう悩みが吹っ切れたのは、いつ頃なんですか。

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伊藤 『悪の教典』のエンドロールに自分の名前を見つけたときです。ちょうど18歳の誕生日を、『悪の教典』の現場で迎えたぐらい、18歳ほやほやの頃だったんですけど、大きい商業映画というか、自分の地元で観られる映画に出演したのが初めてだったんです。それで家族みんなで観に行ったんですが、エンドロールに生徒のひとりとして、たくさんの名前のなかに私の名前があるのを見たとき「あっ、この仕事、辞められないな」って思いました。なんか気持ちよかったんです。

―― 今舞台のお稽古をされてますけど、テレビドラマでデビューして、映画、さらには舞台と、活躍の幅がどんどん広がっていますね。

伊藤 舞台すごく楽しいです。当然、テレビとも、映画ともちょっと違って、何回も何回も同じところを繰り返し稽古して、どんどんどんどん良くしていく。かと思ったら、今までとは全く違うことを言われて、それをまたイチから作り直す。作って壊して、作って壊してという作業が本当に楽しいですね。私、“シャボン玉のメンタル”なので、作って壊してやっているうちに、メンタルがバンバン割れてはいるんですけど、そこは「社訓」を思い出して、「焦るな、はやるな」です(笑)。

 

写真=佐藤亘/文藝春秋 

いとう・さいり/1994年千葉県生まれ。15年「TRANSIT GIRLS」(CX)に抜擢され、以降「その『おこだわり』、私にもくれよ!!」(TX)」、「THE LAST COP/ラストコップ」(NTV)、連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK)等、人気作への出演多数。17年主演映画「獣道」では主題歌も担当した。18年映画公開待機作に、「榎田貿易堂」(飯塚健監督)等がある。