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「女優は辞められない仕事」伊藤沙莉のデトックスは“親友・松岡茉優”

「テレビっ子」伊藤沙莉インタビュー#3

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94年生まれ、9歳で子役デビューして以来、女優歴14年になる伊藤沙莉さんが、てれびのスキマさん「テレビっ子インタビュー」8人目のゲストに登場です。親友・松岡茉優さんのお話から、「俳優の仕事を続けよう」と思った瞬間のお話まで、語り尽くしていただきました! (全3回の3回目 #1#2も公開中)

伊藤沙莉さん

親友の松岡茉優に並べない自分がすごく悔しかったとき

―― 女優として『GTO』での飯塚(健)監督との出会いが大きかったそうですね。

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伊藤 かなり大きいです。もう飯塚さんの現場は日々修業でした。完全に鍛え上げられた感じの毎日。『GTO』の時もまず一番最初にワークショップみたいなのがあって、バーッと色んな課題をやらされて。今、私の親友に松岡茉優っているんですけど、彼女も一緒に『GTO』出てたんです。その時に飯塚さんが、(監督のモノマネで)「とりあえず今俺が見た中で唯一見れる芝居といったら松岡くらいかな、お疲れ」って。我ながらすごい似てたんですけど、今。

―― ハハハハ。

伊藤 こういう感じなんですよ、ホントに。もう呼吸も入れずに一気に喋る。この時は、すごい仲いい茉優だけが認められたっていうのが複雑で、ダーンって落ち込みました。茉優に関してはもちろん自分ではすごく認めてる……というと上からみたいですけど、すごい敬意があるし、素敵なお芝居をするなと思ってるから、そこに並べない自分がすごく悔しくて。

―― 飯塚さんの演技指導はどんなものだったんですか?

伊藤 飯塚さんは元々オリジナルばかりされている方なので、台本をガラッと変えちゃうことにもためらいがありませんでした。記号的というか、それこそジャイアン、スネオみたいな、はっきりとしたいじめっ子ではなくて、なんか憎めないやつらだけど、たまに行き過ぎていじめがエスカレートしちゃうといういじめっ子を演じさせてくださったのが飯塚さん。しかも、いじめっ子にコメディー部分を担当させるというのは、なかなかないことだと思うんです。憎まれ口叩いてるのに、なんか憎めないねっていう演技の絶妙さ加減は飯塚さんから教わったんだろうなと思っています。『ひよっこ』の米子にもそれが活かされていたなら、本望ですね。

人生で会った大人で一番厳しかった、飯塚健監督

―― 米子はそういう感じでしたよ。

伊藤 そうだったらうれしいです。飯塚さんは人生で会った大人で一番厳しい方でした。一番愛情深く教えてくださったということなんですけど「美術部、撮影部、照明部、演出部、録音部、メイク部、衣装部とか、そういう人たちがいる中の俳優部にすぎないからな」ということはよく言われました。

 

―― 演技指導以外の、現場での心得のようなものですね。

伊藤 「お茶飲んでください」とか、「椅子用意しました」とか、私たち俳優はそうやって大事に扱われることが多いから、きっと忘れちゃう人は忘れちゃう。その中で、改めて思い出させてもらいましたね。みんなでひとつの作品を作っているわけで、誰が偉いとか、本当はないんですよ。どこか1人でも欠けたら作品はできないということを熱く教えてくれたのは、飯塚さんです。お芝居のスキルというか、瞬発力というか、判断力とか、同じことを何回でもできるための技術とか、そういうのも叩き込まれました。

―― 俳優としての基礎的なことを。

伊藤 そうですね。最近も、「あっ、これはお芝居の基礎だな」ということを、今稽古中の舞台『すべての四月のために』の作・演出である鄭(義信)さんから教わっていますが、そうした俳優作法のようなものを最初に一から教えてくれた飯塚さんの存在は大きいです。いまだに会って、飲みに行きます。

―― 何か感想とか言われたりするんですか。

伊藤 そうですね、「この前観たよー」とか言ってくれたり。(素っ気なく)「観ました」って言われると、あっ頑張ろうって思う(笑)。