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乃木坂46を卒業後、心理カウンセラーに

 アイドルと病気ということでいえば、伊藤かりんと同じく乃木坂46のOG・中元日芽香がこの6月に刊行した著書『ありがとう、わたし 乃木坂46を卒業して、心理カウンセラーになるまで』のなかで、グループ在籍中に休業したときのことを詳しく記している。それによれば、シングル表題曲を歌う選抜メンバーになかなか選ばれなかった彼女は、ストレスがたまるなかで過食症を経験、その後、選抜入りするため努力を重ねて念願をかなえるも、心身のバランスを崩して、結局、休業せざるをえなかったという。著書のサブタイトルにあるとおりグループ卒業後に心理カウンセラーになったのも、自身が休業中にカウンセリングを受け、心を動かされたのがきっかけであった。

『ありがとう、わたし』(中元日芽香・文藝春秋)

 自己実現のため頑張るあまり、いざ目的を達成したとたんに自分を見失い、心身ともにぼろぼろになってしまうということは、アイドルでなくても誰にでも起こりうる。中元が自らの体験を著書として公表したのも、《悩んでいる誰かの心に、実体験という形で、そっと寄り添うことができたらいいな》(前掲書)という思いからであった。

 柏木由紀も、YouTubeの公式チャンネルで病気について改めて伝えるにあたり、人間ドックを受診したおかげで早く見つけることができたと、自分の体験が「誰かの何かにつながればいいな」と語っていた。伊藤かりんもまた、病気を公表後、同じ病気に悩む人から「治療を受けるのに両親を説得するため、YouTubeでのかりんちゃんの説明を見せようと思います」といったメッセージを多数もらったという。もちろん、たとえ芸能人でも病気はきわめてデリケートな問題であり、扱いには最大限の注意を払うべき個人情報である。それでも、ここにあげたケースが示すとおり、表舞台で活躍する人が病気を公表し、自らの体験を語ることで、励まされたり、受診や治療へと後押しされたりする人々が少なからず存在することもまた事実だ。

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 元SKE48の矢方美紀も、乳がんのため2018年に左胸すべてと周囲のリンパ節を切除する手術を受けたあと、ブログでそのことを公表すると、予想以上に大きな反響があったという。