「笑顔率」を測れるデジカメで笑顔のトレーニング
――外見にも強いこだわりがあり、サングラスをかけたり、上半身に筋肉を付けたり、走り幅跳びの踏み切り後に義足を前に回す動作、そして笑顔を作る訓練に至るまで、格好良さを追求した結果なのですよね。
山本 ええ。初めて出た国際大会の表彰台で、全然嫌な気持ではなかったのに、写真を見たら僕だけブスッとした顔に感じられたんです。
これはまずいなと思い始めた時にたまたま「笑顔率」を測れるデジカメがあったんです。だから、どうすればそのカメラで笑顔率100%と判定されるのか、何度も何度も写真を撮り鏡の前で試行錯誤を繰り返しました。
その機械が認識すれば、誰もが笑顔だと認識してくれるのかなと思って、トレーニングした感じです。
――笑顔さえも定量的に計測し、セルフフィードバックして改善していったと。ご自身としてしっくりくる笑顔になりましたか?
山本 自分がしっくりくるよりも「他の皆が見てしっくりくる」ほうがいいと思ったので、あくまでそこを基準にしました。
カッコ良さを追求した結果、記録も伸びた
――何事にもロジックが貫徹されているのですね。一方で、上半身に筋肉を付けたり、走り幅跳びで踏み切った後に義足を前に回すといったことは、競技に影響しませんか?
山本 体を全体的に大きくして筋肉を上手く使えるようにするのはむしろプラスに働くと思います。上半身や体幹も含めバランス良く鍛える事は走る上で大切です。筋肉はパワーを発揮するものなので、余程付け過ぎない限りほとんど邪魔になることはないと思うんです。
足を回すのも格好良さを追求した結果ですが、記録も伸びましたね。ちょうど変化を模索していた時期だったこともうまくマッチして両方が良くなりました。
――他方で、伝記では、つい天狗になってしまってお世話になった人への記録更新の報告を怠ったエピソードなど、取り繕いたくなりそうな部分も包み隠さず書かれており、内面は飾らない主義なのかなと感じました。
山本 静岡出身なのですが、大学入学のために大阪にきた当初、関西人って人の嫌がる所をいじってきて、それを笑いにするんだという印象を受けたんですよね。最初は少し嫌でしたが、その経験から「むしろ全てさらけ出したら精神的に超楽になるじゃん」と気付きました。
例えばハゲにしても、ハゲたものはハゲたんだから仕方ない。ならむしろ全部剃っちゃえば皆に覚えられやすくなるな、と。マイナスをプラスに考えるようになりましたね。
【続きを読む】「社会面は嫌だ。スポーツ面に載せてよ」「一競技に金メダルが13個も…それでいいのか」パラ金メダル候補がパラスポーツに抱く“複雑なキモチ”