在宅ワークやオンライン授業が普及したことにより、就職・転勤・進学などで引越しをする人がコロナ以前に比べて激減している。その一方で、引越し業者に作業を依頼する客側には、以前だったら考えられない“おかしな客”が増えているという。
ある引越し業者は「最近はクレーマーのような客、非常識すぎる客、ありえないモノを我々に運ばせたりする困った客が本当に多い」と頭を抱える。
引越し業者を困らせる客とはいったいどんな人たちなのか。現役の引越し作業員2人に“ヤバい客”について話を聞いた。(取材・文=押尾ダン/清談社)
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タワマン高層階まで階段で荷物を上げさせる“カスハラ”客
松本雄大さん(仮名、38歳)は引越し業界歴15年以上のベテラン作業員だ。松本さんによると、おかしな客が目立ち始めたのはここ数年のことだという。
──おかしな客というのは、具体的にどういう人たちなんですか。
松本 引越し業者が困るのは「現場に着いてもすぐ作業に取りかかれない」「事前に聞いていた話と違う」「本来必要のない作業をさせられる」といったケースです。しかし、最近はそういう次元ではなく、我々を困らせることが目的のような客が増えています。
たとえば、タワマンの27階に引越しするのに事前に高層階と言わず、しかも、現場に着いたらマンションが新築で、エレベーターが稼働前なので使えないということがありました。
エレベーターが動かなければ作業ができないので「別の日にしましょう」と提案したのですが、その中年男性の客は「エレベーターはあると伝えているはずだ。動くかどうかは聞かれなかった。いいから荷物を上げろ」と、どうしてもその日に作業をやらせようとする。
──ということは、27階まで階段で荷物を上げさせられた?
松本 そうです。地獄でしたよ。本来なら2~3時間程度で終わる作業が丸1日かかりました。そのうえ、「テレビに傷が付いている。お前らの責任だから新品と取り替えろ」と言いがかりをつけてきて、また27階から1階まで降ろさせようとする。
ほかにも「俺が金払っているんだから言う通りにやれ」と意味のない作業をたくさんやらされました。そうやって我々が疲弊する様子を一緒に住む女性と2人でニヤニヤしながら見ているんです。間違いなく、わざとやっていたんだと思います。