悲願の金メダルをつかんだ侍ジャパン。どの試合も手に汗握る僅差の戦いで、本当に胸が熱くなった。
ホークスから侍ジャパンに選ばれてオリンピックを戦った千賀滉大、甲斐拓也、栗原陵矢、柳田悠岐の4選手もそれぞれに輝きを放った。
特に準々決勝でのアメリカ戦だ。すべてのホークスファンが大いに胸を張ったはずだ。ずっと不振に苦しんでいた千賀が1点ビハインドの6回から登板して2回5奪三振無失点の快投。手放しかけていた流れをもう一度手繰り寄せた。柳田は3回のタイムリーに続き、1点差を追う9回1アウト一、三塁では執念の“犠牲内野ゴロ”で土壇場同点の打点をマークした。
そして勝負を決めたタイブレークの10回だ。無死一、二塁から始まる攻撃で走者を進めたかった日本ベンチは代打に栗原を告げた。五輪初打席、その初球で見事一塁線にボールを転がして1アウト二、三塁と最高のチャンスをおぜん立てした。ホークスではチーム屈指の勝負強さがウリで、大事な得点源として期待されている選手だ。送りバントは今季ペナントレースの中でも2度しか決めていない。しかし、ホークスの平石洋介打撃コーチによれば「(今宮)健太とクリは同じくらいバントが上手い。経験は健太の方がずっとあるけど、技術は同じくらいという信頼度を僕らは持っています」とのこと。プロ野球歴代4位の通算323犠打を決めてきたバント名人を引き合いに出して栗原の技術を大絶賛していた。
そして、そのチャンスでサヨナラ打を放ったのが甲斐だった。甲斐はこのほかにも1次リーグ初戦のドミニカ共和国戦で同点スクイズを決め、続くメキシコ戦でも先制された直後に同点タイムリーを放つ活躍を見せた。そして何より、侍ジャパンの扇の要として投手陣を引っ張った。決勝のアメリカ戦では完封リレーを導き、金メダルの“胴上げ捕手”となった。ちなみに、ベンチ内で電話を取りブルペンとの伝達役を担っていたことも話題になった。アイフォーンならぬ“甲斐フォーン”グッズが発売されれば、結構売れるのではないかと思わず考えてしまった。
また、決勝は、ホークスのニック・マルティネスがアメリカの先発として登板し日本代表に立ちはだかった。日本に勝ってほしいけど、吉田正や浅村に打たれるのは複雑だ……と落ち着かなかったホークスファンも多かったはずだ。マルティネスも6回5安打1失点と奮投。さすが今季ホークスで7勝、防御率2.03と好成績を収めている実力をしっかりと発揮してくれた。
とにかく、話題が尽きなかった東京五輪。
日本中が熱狂する中で、ひっそりと行われたプロ野球・エキシビションマッチもなかなか面白いゲーム内容がいくつも見られた。
エキシビションマッチでは快音を連発する「キューバ砲」
ホークスは後半戦の逆襲に向けて多くの新戦力を試す機会に。4番には大砲候補のリチャードが座り続け、ドラフト1位ルーキーの井上朋也も“ドームデビュー”を果たした。リチャードは7月28日のDeNA戦に続き、8月3日の巨人戦でエキシビション2発目となる本塁打を戸郷翔征からライトスタンドに放った。「流し打って、あの方向(ポール際)にホームランを打つことがなかったんで、どうやって打ったとか憶えていない」と驚きの表情を浮かべていたが、首脳陣へのアピールに成功したエキシビションマッチとなった。また、井上はショート内野安打で“初ヒット”を記録。普段はポーカーフェイスでプレーする事の多い18歳が、一塁へ気迫たっぷりのヘッドスライディングを見せてスタンドから拍手喝采をもらっていた。
そんな戦いが続く中、ホークスとしてはかなりの掘り出しモノとなりそうな選手がPayPayドームで輝きを放った。
五輪中断期間に獲得したダリエル・アルバレスのことだ。
アルバレスはキューバ出身でメジャーリーグ経験もある現在32歳の右打者。キューバ国内リーグで7年間プレーしたのち、2015年に米大リーグのボルチモア・オリオールズでメジャーデビューを果たした。2シーズンで計14試合出場、1本塁打、1打点。その後メキシカンリーグを経て、今年は日本国内独立リーグ「ルートインBCリーグ」の茨城アストロプラネッツと契約した。こちらでは24試合出場で打率.295、6本塁打、19打点の成績を残していた。
正直、デスパイネやグラシアルのような国際舞台の経験があるわけでもなく、実績も特段飛び抜けているわけではない。これは過度な期待は禁物か……と思っていたが、なかなかどうして、エキシビションマッチでは快音を連発させた。
ここまで7試合に出場して19打数10安打で打率.526、1本塁打、5打点と打線の中枢としての活躍を見せている。特に得点圏に走者を置いた場面では4打数4安打4打点と無類の勝負強さを発揮している。