どんどん充実する11球団FCと、貧弱化する巨人FC
しかし――。19年のFC改革以降、コロナ禍に揺れた20年、そして今年と、巨人FCは何ら魅力のないFCとなってしまっているのである。コロナ禍に揺れに揺れた昨年6月29日には、早々に「20年度会員は21年度まで無料で会員資格を延長する」ことを発表。同時に「21年度の入会特典はご提供できません」とリリースされた。
この決定により、何の手続きも必要なく、僕は自動的に「21年度会員」となったのである。もちろん、新規特典グッズは何も届かない。一応、2200円を追加で支払えば「21年度入会特典セット」を購入できるのだが、せっかくなので今季は家族名義で新規入会してみた。「トートバッグ」と「ブランケット」ではなく、雑然としている仕事部屋を整頓すべく、「ストレージバスケット」を選択したのだが、チープな作りでガッカリだった。
現状の巨人FCについては、「とにかく優先販売で、確実に観戦チケットを購入したい」というメリットを求めるファンにとっては意味のあるFCだ。しかし、「FCに入会することでチームへの帰属意識を持ちたい」とか、「FCオリジナル特典グッズがほしい」というファンのニーズにはまったく応えられていない。
それはそれでいいではないか? という声もあるのかもしれない。しかし、巨人以外の11球団のFCの現状を鑑みると、他球団FCの充実ぶりが実に際立って見えるのだ。いや、裏を返せば「巨人FCの見劣りっぷり」が悪目立ちしすぎているのだ。前述したように、かつて巨人FCは他球団の範となる、まさに「球界の盟主」を自任するにふさわしい存在だった。
しかし、現在はまったくそうではない。中日FCはさまざまな試行錯誤の末に優良FCへと変貌を遂げた。ソフトバンクFCは「ワイヤレスチャージャー」や本革仕様の「レザーショルダーバッグ」を特典とし、僕は毎年「どれか一つに決められないよ」と嬉しい悲鳴を上げている。13年にFC改革を断行したヤクルトの「スワローズクルー」は、観戦特典、グッズ特典、ポイント特典のバランスが取れた安定した運営を続けている。
04年の球界再編騒動を経て、05年以降のFCは劇的に改善され、どの球団も「ファンズファースト」の姿勢を鮮明にしている。その中で、唯一巨人FCだけがこのままでいいはずがない。繰り返す。つい数年前までは、巨人FCは他球団の範たる存在だった。このままでいいはずがないのだ。はたして、22年の巨人FCはどうなるのか?
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