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25年ぶりにやって来た“お祭り”…この陰鬱な2021年を、我々オリックスファンは楽しむ権利と義務がある

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/08/17
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この陰鬱な2021年の夏の記憶を、我々はきっと変える事ができる

 そして、それはファンも同じ事だ。例えば、オリックスファンはオリックスファンである限り、クライマックスシリーズは2回しか経験した事がない。しかも、その2回も何れも第一ステージで終わっている。だとすれば、選手同様、ファンにとってもここから誰も経験した事のない「非日常」が待っているのだ

 そもそも我々にとっては、チームが首位を走り勝ち続ける日々こそが既にとんでもない「非日常」の筈であり、今こそ我々の真価が問われている。そう、こんなめったにやってこない「非日常」に「慣れて」しまうのはあまりにも勿体ない。況してや、それを負担に感じるのはナンセンスなのだ。ソフトバンクファンや、巨人ファンにはわからないかもしれないけど、これはオリックスファンにとっては、実に25年ぶりにやって来たとんでもない「お祭り」なのである。そして「お祭り」である以上、我々にはそれを存分に楽しむ権利がある。あの年、あの日、あの時、自分がどこで何をしてどんな事を考えていたかを、何年経っても覚えておけるくらいの日々にしようじゃないか。

 そしてそうすれば我々はこの陰鬱な2021年の夏の、もう一つの「非日常」の記憶を変える事だってできる。多くの関西の人々は、「1985年」という年を、ゴルバチョフがソ連書記長に就任した年としてでも、プラザ合意を契機にバブル経済が本格化した年としてでもなく、みんなで道頓堀に、ランディー・バースの代わりにカーネル・サンダースを胴上げして投げ込んだ年として、覚えている。そして同じようにこの陰鬱な「2021年」を、オリックスの優勝をみんなで祝った年だとして記憶していけるなら、それはどんなに素晴らしい事だろう。

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 だからこそ、俺達にはこのコロナ禍での辛い日常を、楽しむ権利と義務がある。大丈夫、山岡ももうすぐ帰ってくるオリックスに不安なんか存在しない。そして俺たちで、この社会を少しでも明るいものに変えていこうじゃないか。だって、プロ野球って、きっとその為にこそ存在しているんだもの。

山岡泰輔

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