夏の甲子園が開幕した8月10日、文春野球の西武監督である中島大輔さんから連絡が入った。西武が今年獲得すべき高校生のドラフト候補を紹介してほしいというのだ。

 ドラフト候補となるアマチュア選手を見る醍醐味の一つはその選手の将来像を想像することであり、「この選手は今ならこの球団に行った方がいいんじゃないかな?」と思いながら見ていることも多い。それを発表する場をいただけたということは嬉しいことであり、二つ返事で承諾した。

 特定の球団におススメの選手を紹介するにはまずその球団の補強ポイントを洗い出す必要がある。更に球団によって“はまりやすい”選手の傾向というものもあるため、過去に指名した選手と主力になった選手のタイプも考慮に入れるべきだろう。

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 また、ドラフト1位でしか指名できないような選手を何人も取り上げても獲得の現実味がなく面白みがない。

 そのため1位、2位の上位で狙う選手を二人、3位以下の下位指名で狙う選手を二人という形でピックアップしていきたいと思う。

下位指名の野手が育つ土壌

 まず西武の補強ポイントで真っ先に挙がるのが左投手ではないだろうか。

 今年一軍で勝ち星をあげた左投手は浜屋将太と内海哲也の二人だけで、ともに1勝にとどまっている。二軍まで見ても今後の飛躍が期待できそうなのはルーキーの佐々木健くらいしか見当たらない。昨年のドラフトでも早川隆久(早稲田大→楽天)を1位で指名しており、今年も大学生で1位候補と言われている佐藤隼輔(筑波大)、隅田知一郎(西日本工大)などを狙う可能性もあるが、将来を考えても高校生サウスポーを一人は獲得しておきたいところだ。

 野手に関しては昨年支配下で5人を指名したこともあって若手の有望株はかなり増えた印象を受ける。ただそんな中で気になるのが23歳以下の若手が牧野翔矢しかいない捕手だ。森友哉が今年で26歳とまだまだ若いものの、そろそろ次の正捕手候補を獲得しておきたいところだ。

 次に過去の球団としての傾向だが、投手に関してはいわゆる“未完の大器”タイプは苦戦している印象を受ける。高校卒で主力となっている選手を洗い出してみると菊池雄星(現シアトル・マリナーズ)、高橋光成、今井達也とドラフト1位が並び、下位で戦力となっているのは平良海馬しか見当たらない。

 一方で高校生以外も含めて上位指名で入団しながら苦戦している投手の顔ぶれを見ると中崎雄太、相内誠、川越誠司、中塚駿太などで、いずれも“未完の大器”タイプである。今年のルーキー佐々木健もそれに該当するだろう。投手で上位指名するなら大舞台でも結果を残しているある程度の完成度を備えた選手が望ましいと言えそうだ。

 一方の野手は投手と比べると高校卒の下位指名でも主力になっている選手が多い印象を受ける。既に退団している選手まで含めると中島宏之(現巨人)、栗山巧、浅村栄斗(現楽天)がリーグを代表する選手となり、愛斗もレギュラーをつかみかけている。

 大学生、社会人まで広げると秋山翔吾(現シンシナティ・レッズ)、金子侑司、外崎修汰、源田壮亮がいずれも3位の指名ながら主力となり、今年ブレイクした呉念庭、若林楽人も下位指名で入団した選手である。西武に限らず全体的に野手は投手よりも順位が低くなることが多いが、それにしてもアマチュア時代そこまで評価の高くなかった選手を多く一流にしているのは西武の大きな強みと言えるだろう。