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“ポスト甲斐”の座を掴むのは…ホークス育成3年目・渡邉陸捕手に飛躍の予感

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/08/19
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1軍で実績がある投手と対戦して“気持ち”に大きな変化

 昨季、刺激になった存在がいた。それは、広島東洋カープの羽月隆太郎内野手。神村学園高校の同級生で、共にプロの門を叩いた同士だ。支配下選手でプロ入りした羽月選手は、2年目の昨季、1軍デビューを果たし、プロ初安打も初打点もマークした。彼の活躍は渡邉捕手にとって大いに刺激となった。

 また、昨シーズン終了後のみやざきフェニックス・リーグでも大きな気持ちの変化があった。1軍で実績がある投手と対戦し、「自分でも歯が立たないことはないんだ」と思えたという。今まで、1軍の選手とは住む世界が違うのだと心のどこかで感じていた。でも、実際に対峙し、肌で感じたことが“自信”に繋がった。

 2軍で成功体験が増えると、表情やプレー姿にも変化が表れ始めた。内気な所もあったが、高谷捕手や海野捕手ら先輩たちに質問をぶつけるようにもなった。今までは真面目で謙虚ゆえに、なかなか自信を持てなかったのかもしれない。でも、渡邉捕手は着実に場数を踏み、しっかり前へ進んでいたのだ。

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 6月13日に甲子園球場で行われたウエスタン・阪神戦では公式戦初となる本塁打を放った。高校2年時に神村学園は甲子園に出場したものの、自身は聖地でプレーすることが叶わなかった。2軍戦ではあるが、憧れの場所で放ったメモリアルな一発に「気持ちよかった」と振り返るその表情も充実感に満ちていた。

©上杉あずさ

 打撃でアピールを続ける渡邉捕手だが、もちろん捕手としても魅力的だ。3軍でずっと指導してきた加藤領健バッテリーコーチは「野球勘があるし、もっと目立って欲しい」と潜在能力に気付いているからこそ発破を掛けていた。小学生の頃から捕手一筋で培ってきた感性は貴重なもの。出場機会を増やすためにプロ入り後は一塁や外野を守ることもあるが、本人も「キャッチャーが一番楽しい」と捕手への想いは強い。

 一番のセールスポイントは強肩。既に渡邉捕手の二塁送球に惚れ惚れしているファンも多いのではなかろうか。脚は長いが捕って投げるまでも速いのだ。肩といえば、ホークスには既に『甲斐キャノン』で名を馳せた甲斐捕手がいるが、『陸キャノン』と安易に言った私を許して欲しい。「『キャノン』以外でお願いします」と渡邉捕手も新たな代名詞誕生を望んでいる。更に強肩を魅せつけてもらって、ゆくゆくは同じ育成出身で日本の正捕手へと駆け上がった先輩の背中を追って欲しい。

 思えば、甲斐捕手が支配下登録されたのもプロ3年目のオフだった。チーム状況は違うけれど、アピールの幅や方法は広がってきた。先輩たちが様々な形で1軍の扉をこじ開けてきたのを見てきた渡邉捕手は、どんな形で、どんな風にその扉を開いていくのか。ホークスの支配下選手の枠は残り1つ。オフを待たずして、8月31日の期限までに果たして……。今後も楽しみに見守っていきたい。

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