大河ドラマにおける「過去と現代の対話」
歴代の大河で印象深いオープニングといえば、『獅子の時代』(1980年)で、1867年にパリ万国博覧会に出展した幕府使節団の一行が現代のパリ・リヨン駅に現れたシーンも思い出される。この使節団に若き日の渋沢栄一も随行していたことは、いままさに『青天を衝け』で描かれているところだ。
菅原文太と加藤剛が主演した『獅子の時代』では、2人の演じる会津と薩摩の藩士(いずれも架空の人物)がパリで知り合うことから、現地ロケが大々的に行われた。『青天を衝け』でも当初は日本からスタッフとキャストがフランスに渡って撮影する予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のためとりやめとなる。しかし、劇中にはどうしてもフランスの風景が必要だった。そこで、フランスと日本でそれぞれキャストを撮り(フランスでは背景もあわせて撮影)、あとから合成するという手法がとられた。先週放送の第22回でいえば、将軍慶喜の名代・徳川昭武(板垣李光人)がナポレオン3世に謁見するシーンなどがそうやって撮られたというのだが、まったく違和感を抱かせないところに技術の発達だけでなくスタッフの熱意を感じる。
栄一たちがヨーロッパにいるあいだに、先述のとおり日本では大政奉還、さらには明治維新と時代が大きく動いていく。そのタイミングで『青天を衝け』はいったん今週で中断、次の第24回まで3週間(7月25日・8月1日・8日)、東京オリンピック中継のため放送休止となる。再開したあと、果たして家康は近代化していく日本の姿を、いかに現代の私たちに向けて伝えるのだろうか。大河ドラマにおける「過去と現代の対話」はいまなお続いている。
【参考文献】
『NHK大河ドラマ・ガイド 青天を衝け 後編』(NHK出版、2021年)
ジェームス三木『片道の人生』(新日本出版社、2016年)
吉田直哉『映像とは何だろうか――テレビ制作者の挑戦』(岩波新書、2003年)