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「こんばんは、徳川家康です」大河ドラマ『青天を衝け』に“型破りな語り部”が出るのはなぜ?

2021/07/18

 NHKの大河ドラマ『青天を衝け』のきょう放送の第23回では、主人公の渋沢栄一(吉沢亮)が幕府使節団の一員として渡欧しているあいだに、幕末のクライマックスとなる大政奉還が描かれる。予告編では、草彅剛演じる徳川15代将軍・慶喜が「政権を……帝(みかど)に返上する」と告げるカットに、北大路欣也演じる初代将軍・家康が感慨深げに目をつぶる姿が挿入されていた。

吉沢亮 ©時事通信社

 北大路扮する家康は、今年2月に『青天を衝け』がスタートしたときから折に触れて劇中に現れ、時空を超えて幕末・維新について解説するユニークな役割を担う。毎回登場する際のあいさつ「こんばんは、徳川家康です」は、視聴者にはすっかりおなじみとなり、たまに出てこなかったりするとSNSで騒がれるほどだ。家康が語る後ろでは、パフォーマンス集団「カンパニーデラシネラ」のメンバーが、パネルなど小道具を自在に操ってパントマイムを披露し、解説に彩りを添えている。 

 家康を解説役に据えるアイデアは、脚本の大森美香によるもので、当初はスーツ姿で登場させる予定であった。それが配役が北大路に決まると、彼が大河『江~姫たちの戦国~』(2011年)などテレビで何度も家康を演じてきたことを踏まえ、和装に変更されたという。

北大路欣也 ©AFLO

『八代将軍吉宗』の“案内役”は…

 幕末・維新を舞台にしたドラマに家康が登場するとは、いかにも型破りだ。ただ、こうした役どころは過去の大河ドラマにも例がある。たとえば、西田敏行が徳川吉宗を演じた『八代将軍吉宗』(1995年)では、吉宗と同時代を生きた浄瑠璃・歌舞伎作者の近松門左衛門に江守徹が扮してドラマの案内役を務めた。このアイデアは、脚本のジェームス三木がドラマの語り口をどうするか考えるなかで生まれたという。従来どおりナレーターが陰で解説するのは、ありきたりで新鮮味がない。では、登場人物の誰かが語り部を兼ねるのはどうか。そこで目をつけたのが近松だった。