テレビ解説では「プレーの先読み」が面白い
「バック前へのサービスはことごとく攻められていて、ロングサーブも対応されている、この状況ではもうフォア前にしか出すところがありませんね」と言うと本当にフォア前へ出す。
このように心理と技術が折り重なっていく様が分かるようになると、非常に面白くなるだろう。私が散々そのような解説をしているので、そのあたりのことがある程度分かってきた視聴者も増えてきたように思う。
卓球は心理的要素が非常に大きい部分を占める競技なので、このような先読みができる。
ちなみに、野球なども比較的そういう先読みがしやすい部類の競技だ。解説者が「次はフォークで落としますね」と言うと、ピッチャーは本当にフォークを投げる。つまりピッチャーはバッターの心理を読み、その裏をかくようなボールを投げるので解説者はその心理を先読みして伝えているのだ。
しかし、サッカーの場合だと少し難しいだろう。サッカーはチームとしての戦術要素が強いので先読みがしづらい。よって、サッカー解説者は、試合が終わったあとに細かい解説をすることが多い。「前半30 分のこの場面、ディフェンスラインがここで、フォワードがこの位置でボールを待っていて、だから本来はこっちを狙うべきでしたね」といったように解説する。ただしコーナーキックは相手の心理を考えてから攻撃を組み立てるので「ここはディフェンダーが左サイドから走り込んできて、相手を引き付けておいてから、誰彼がヘディングシュートに行くでしょうね」という解説もできるかもしれない。
しかし視聴者としては「なぜその通りになるのか」を理解できなければ面白くない。なぜそうなるのかを理解できてくると、その競技をより深く、より面白く観ることができるだろう。
逆に、誰がどう見ても分かるようなことを解説しても視聴者は面白くない。
ストレートとフォークの2種類しか投げないピッチャーの解説で「次はフォークでしょうね」と言って、実際にフォークを投げたとしても、全く面白くない。視聴者だって分かっているのだから。
簡単すぎず、かといって難しすぎない、ちょうどよいレベルでの先読みをしながらの解説が、最も視聴者を楽しませることができる。