東京オリンピックついに開幕。3大会ぶりの野球競技は7月28日に福島で始まる。
1984年のロサンゼルス大会で「公開競技」として始まって以来、五輪の野球競技は長らく8チームで行われていたが、2008年の北京オリンピック以来となる今回は6チームでの大会となった。
しかも従来通り世界のトップリーグであるMLBの“一軍”にあたる「25人枠」、つまりバリバリのメジャーリーガーは参加しないことが決まっている。
その結果として、今回の五輪競技に参加する選手の中では、MLBに次ぐ世界2番目のプロ野球リーグであるNPBでプレーする選手が、最もレベルが高い。
MLBと対照的に、NPBは現役選手のオリンピック参加を承認している。外国人選手も同様にOKなため、各チームともにNPBの外国人選手や、過去にNPBでのプレー歴がある選手が多数集まることになっている。今回は、そんな各チームにいるNPB出身選手を見て行こう。
「ハマの四番」がアメリカ代表の打線を引っ張る
アメリカ代表には、DeNAのタイラー・オースティンの名前がある。オースティンは2010年ドラフト13巡目でヤンキースに入団。長距離打者として頭角を現し、一時は「フライボール革命」の担い手の一人と言われた。だが、ヤンキースの正一塁手にと期待されたタイミングで左足を骨折するなど運に恵まれず、4球団を転々とした挙句に自由契約になり、DeNAにやってきた。いわばMLBでは夢をつかみそこなった選手だった。
しかし今回の東京五輪、アメリカ代表ではオースティンは絶対的な中心打者だ。ここまでDeNAで19本塁打49打点、打率.314というバリバリの実績。チームにはMLB通算1056安打、218本塁打、オールスター2回出場というスター選手のトッド・フレージャーがいるが、35歳のフレージャーは5月にパイレーツを自由契約になっている。東京五輪代表に決まってから独立リーグと契約をしてプレーを再開した状態で、今の実力ならオースティンの方が明らかに上だろう。
投手陣には、ブランドン・ディクソンがいる。MLBでは8試合0勝とほとんど実績がなかったが、2013年にオリックスに入団してからは、先発投手として金子千尋(現弌大、日本ハム)とともにチームを引っ張ってきた。
宮崎の春季キャンプでは投手陣のリーダーとして早い時期からブルペンで投げ込んでいたものだ。2018年に平野佳寿がMLBに移籍し、オリックスの救援投手陣が不安定になると、2019年に救援投手に転向、2年間で34セーブ10ホールドを記録した。
今年は再び先発への転向が予定されていたが、新型コロナ禍で家族そろっての来日が認められなかったために、オリックスを退団。アメリカに戻りカージナルスのマイナーで投げていた。
在籍9年、大の親日家としても知られ、日本への愛着深いディクソンにとって、再来日は誠に感慨深いし、「再就職」も視野に入っているだろう。
チームにはレイズなどで108勝を挙げたスコット・カズミアーというスターがいるが、37歳の今季はマイナーに落ちている。通算107勝のエドウィン・ジャクソンはフリーエージェントで所属するチームがない。ディクソンも36歳だが、最大のライバルである日本をだれよりも知る彼への期待感は高いはずだ。
アメリカ代表には、ヤクルトの守護神になっているスコット・マクガフと、ソフトバンクの先発投手、ニック・マルティネスの名前もある。マルティネスは昨年オフ、日本ハムを自由契約になったところからの五輪代表であり、感慨深いのではないか。ともに主戦級だろう。他にも2014年日本ハムで中継ぎ投手として投げたアンソニー・カーターの名前もある。