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ですが「カット椅子を使っちゃいけない」ルールには、それとはまた別の理由があります。それは「姿勢」についてです。
これは接客業全般に言えることかもしれませんが、美容師は日常的に立ち姿勢などに対して、厳しい先輩から指導されることが多いです。スマートに立ち振る舞うことが求められ、もちろん気怠そうに立っていると怒られます。
また、美容師は営業中に座ることを良しとはしません。やる仕事がなくても常にお店の隅やフロントなどのどこかに立って、すぐに先輩スタイリストへの助太刀ができる「姿勢」を要求されてきました。
「姿勢」に厳しい美容師
同じように、施術中の作法やカットする時の「姿勢」も厳しく教わります。切る一連の動作が慣れない間は手元がブレやすく、手元に集中するあまり、腰が曲がったりして、立ち姿がカッコ悪くなりやすいものです。
怖い先輩から厳しく教えられたことを遵守してきた先輩美容師は、それをまた後輩に伝授することになります。ですがこだわりが強くなると『この時のあの「姿勢」もシャンとするべき』、「これ」も「あれ」も、と飛躍していきます。すると「姿勢」の重要さを過大に評価してしまったり、本質を見失ったまま教えられてきたことに固執してしまいやすい。
その先輩の感覚はいつのまにか「姿勢が悪い = やる気がない 」と結び付け、“身体的な「姿勢」”と“精神的な「姿勢」”を混同してしまうのです。