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椅子に座ってカットしちゃいけない…「昭和」すぎる美容師業界の“謎ルール”

2021/07/31

 今回は、美容師なら誰しも共感できる「カット椅子」にまつわるお話です。 

 カット椅子とは、その名の通り、座りながら髪を切るために用いる椅子のことです。 

 ただでさえ腰を痛めやすい美容師、余計な負担は避けたい。ですが、これを使わないことを昔から頑なにルール化している美容室が多くあります。 

 勿論これは全ての美容室に当てはまることではありません。ですが古い慣習が残り続けている美容室は多く、未だ“モーレツ”な『悪しき慣習』を引きずっている様子が窺えます。 

 

『カット椅子』とは? 

 美容師はあちこちに髪の毛を引っ張り上げてカットをしていますが、この時にはハサミで切る線がズレないようにするために、必ず毛先を持った手元を見ています。そのため引っ張る方向によって、身体が捻れるようになったり、中腰になったりします。 

 

 窮屈な姿勢になることも多く、足がプルプルしたり身体がブレたりすると、肝心の手元もブレてしまいます。 

 そこで使うのが「カット椅子」です。座る姿勢は立つ姿勢よりも安定し、脚にローラーが付いているので小回りも利きます。 

 

 そこまでして美容師が窮屈な姿勢を取るのには理由があります。なぜなら引っ張り出す角度によって、切った髪の形は変わってしまうからです。 

 頭を平面で説明していますが、実際は球体のように丸いため、引っ張る角度は美容師から見て上下左右、手前、奥、と動きに合わせて髪の毛の切れ方が変わります。

美容師さんが髪の毛を持ち上げて切る動作を図解。引っ張る角度(高さ)によって、髪の毛の切れる長さが変わります。上図のように、引っ張る角度を緑(中心)から直角に設定して切ると、青(一番下の髪の毛)はと赤(一番上の髪の毛)の長さは同じになります。下図のように、引っ張る角度を赤から直角に設定して切ると、赤は短く、青は長くなります。

なぜカット椅子に座っちゃいけない? 

 美容師が座りながら切るには、立っている時よりスペースを広く使う必要があります。特に都内の美容室はテナント自体が狭いので、カット椅子を使うと、人が通れるだけの通路が無くなってしまったり、使わない時に隅に置いているカット椅子が邪魔になってしまうこともあります。