1ページ目から読む
2/4ページ目
無事に峠を越えられるのか……
島根県側最後の集落に差しかかった頃には、積雪は激しくなっていた。歩いている人の姿は皆無で、集落の手前でタイヤの跡も消えてしまった。路面は一面真っ白で、どこまでが道でどこからが田んぼか、分かりづらくなった。20センチほどの積雪に2本の線を残して、488号を進んでゆく。
やがて最初の難所、匹見峡が近づいてきた。右は山肌、左は谷底で、ガードレールはない。谷底は遥か下で、落ちたらまず助からないだろう。普通に走っても酷い道だが、雪がさらに拍車をかけている。
雪の重みで今にも倒れそうな木の下をくぐったあたりで、この先、三坂峠を越えて広島県へ抜けられるのか、不安が徐々に大きくなってきた。とはいえ、一人であれば引き返していたかもしれないが、友人が同乗しているという安心感があった。いざとなれば、車を押してくれるだろうと思い、そのまま進むことにした。
目に見えて積雪が多くなってきた
降り続いていた雪は小降りになってきたものの、目に見えて積雪が多くなっていた。30~40センチはあるだろうか。降ったばかりの新雪なので、軽くて滑りにくいのが救いだ。
積雪の道を走る時は、滑ったり、雪にハマって動けなくなる心配だけではなく、雪の下に隠れているものにも警戒しなければならない。これだけの積雪があると、落石や側溝も見えなくなる。道の中央をゆっくり走るしかないが、時々、落石に乗り上げて車体が大きく揺れた。
雪の重みで木や竹が倒れ込んでくることもあるので、それらをそっと車で押しのけながら進む。不意に木の上に積もっていた雪が落ちてきて、視界が真っ白になることもあった。対処法としては、とにかくゆっくり走る以外になかった。