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「トップと対戦しないと」「負けてもいいから」…日本バドミントン躍進の背景にいた“意外な改革者”が行った取組とは

『日本のバドミントンはなぜ強くなったのか?』より #1

2021/08/03
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意識改革

 それが朴さんになってからは、海外遠征前は必ず国内で1週間合宿をして、チームジャパンという気持ちを高めてから「さあ、行こう!」というスケジュールになりました。それ以前はそれぞれが所属チームで練習をして、フライト当日の空港で顔を合わせていましたから、戦う準備というものがまるで変わりました。

 遠征前の合宿も加えると、月に一度ぐらいは日本代表が招集されて、朴さんのもとでトレーニングを積むことになります。質の高いトレーニングがそれだけできるわけで、体力はついていきましたし、技術的にもレベルアップしていったと思います。

 朴さんは来日したばかりの頃を振り返って、「日本人はすごくポテンシャルが高いのに、日本代表という意識が足りなかった」と話しています。日本代表の一員としての自覚とか誇りとかに選手が目覚めるためにも、強化合宿の回数を増やす必要があったのでしょう。

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 バドミントンは企業スポーツですから、チーム側は自分たちの手元に選手を置いて、自分たちで指導をすることを当然のこととしてきました。それだけに、朴さんのやり方は波紋を呼んだそうです。衝突もあったけれど、朴さんは押し通したそうです。

©JMPA

 強化方針もはっきりと変わりました。

 バドミントンではテニスと同じように、世界を転戦する『ワールドツアー』が行われています。現在はワールドツアーファイナルズ、ワールドツアースーパー1000、同750、同500、同300、同100の6つのレベルの大会があり、ツアーファイナルがもっとも獲得ポイントが高く、ツアースーパー100がもっとも低く設定されています。『ワールドツアー』よりグレードの高い大会としてオリンピックや世界選手権があり、グレードが低い大会もあります。オリンピック出場を狙う選手は、1年間に一定数以上の大会に出場し、ポイントを稼いでいきます。プロテニスやアメリカのゴルフツアーを連想してもらえば、分かりやすいかもしれません。

 獲得できるポイントが高い大会には、当然ながら強豪選手が集まってきます。どれぐらいのグレードの大会に出て、どれぐらいの成績を狙うのかで、その選手の実力が見えてきます。