身体が大きくて強く、持久力もある……。多くのスポーツの場合、そのような身体的なアドバンテージが勝敗に作用するケースは非常に多い。しかし、他国と比べ、身体的に優れているとは言い難い日本人選手がバドミントンの世界では好成績を残し、ランキングの上位に名を連ねている。今回の五輪こそ、まさかの結果に終わってしまったが、日本人選手が躍動する理由はいったい何なのだろうか。
ここではバドミントン元日本代表でロンドンオリンピック銀メダリストの藤井瑞希氏による著書『日本のバドミントンはなぜ強くなったのか?』(光文社新書)の一部を抜粋。日本のバドミントン選手が活躍する納得の理由について紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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身体が小さくても勝てるスポーツ
バドミントンのシャトルは、4.74グラムから5.50グラムまでの範囲と決められています。お子さんでも持てるぐらいに軽い。
コートのサイズも大きくはない。
普通に考えたら、身体が大きくて強くて、持久力のある人が勝つでしょう。
ところが、身長160センチの私のような選手でも、オリンピックで勝つことができる。それはやはり、駆け引きとか分析とか、相手よりも体力を減らさないようにプレイするといったことで、勝機を見出せるからなのです。
体力を減らさないためには、相手の球筋を読めるかどうかがポイントになります。
読めている状態では、身体に無駄な力が入っていない。動いてもキツくない。
それに対して読めていない状態では、1回グッと身体に力が入り、そのあと力を抜いて動くので、無駄なアクションが多くなります。「あっ、こっちか」というような反応からの動きが増えると、だんだんと息が上がってきます。
表現を変えてみると、相手に「何かイヤだ」と思わせたら優位に立てます。スマッシュが速いから取れないのではなく、何かリズムがつかめない、何か読みにくい、何かプレイが噛み合わない、それで決められちゃう、というのはストレスで、精神的なダメージが蓄積していくからです。
現役時代の私は、「スマッシュが遅い」と言われていました。けれど、ショットの種類が多かったこともあって、それでも決めることができました。身体のサイズが小さく、他の選手に比べてパワーやスピードに優れていたわけでもないのですが、対戦する選手からは「藤井さんはやりづらい」と言われたものです。「何をやっても読まれるから攻め手が見つからないし、気力が削そがれる」と。私にとっては最高の褒め言葉でした。