もちろん、ここぞとばかりに点差を詰めようとしてくる相手に対して、もう一方の選手(ペア)は必死に抵抗します。冷静に駆け引きをして流れを呼び戻そうとしたり、あえて力ずくで抑え込もうとする場合もある。
力で抑え込もうとすると、身体も気持ちも固くなって技術を発揮しにくくなります。難しい局面をしのぐ手段としては、適切ではないかもしれません。けれど、相手の勢いを受けているだけでは流れが変わらないから、パワーとかスピードで対抗する、という考え方は成り立ちます。セオリーどおりのプレイがいつも正解とは限らないところに、スポーツの面白さがあるのでしょう。
ミスには攻めのミスと守りのミスがあります。攻めのミスは前向きなメンタルで起こったミスとか、その後のプレイに影響を及ぼさないミスを指します。リスク承知で打ちにいって入らなくても、精神的なダメージは最小限に抑えられるでしょう。
バドミントンはメンタルのスポーツ
守りのミスは切り替えが難しいです。慌てた、迷った、焦った、選択を誤ったという理由のミスは、精神的なダメージを受けるし、対戦相手につけ入るスキを与えてしまいます。そこですぐに気持ちを切り替えられる選手は、一流と言うことができます。
私自身はバドミントンを「メンタルのスポーツ」と位置づけますが、どんなスポーツも時代によって変わっていきます。ファッションのようにトレンドがあります。
バドミントンも例外ではなく、近年は技術の占める割合が大きくなっていると感じます。精神的な駆け引きよりも、技術のぶつかり合いで勝敗が決まるケースが多い。長いラリーでポイントを取り合っていくというよりは、スピード重視の攻防が増えました。これは世界的なトレンドで、東京オリンピックにも持ち込まれると思います。
それでも、メンタルのスポーツとしての要素がなくなることはないでしょう。
試合会場やテレビでバドミントンを観る機会があったら、ミスをした選手に注目してみてください。ミスをした次のプレイに注目してみてください。
そのまま崩れてしまうのか。それとも、立て直すのか――。
バドミントンがメンタルのスポーツだという意味が、みなさんにも理解できるはずです。
【前編を読む】「トップと対戦しないと」「負けてもいいから」…日本バドミントン躍進の背景にいた“意外な改革者”が行った取組とは
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