日本のバドミントンを変えたコーチ
中国、韓国と来たら、次は日本です。
中国と韓国に対して分かりやすく差別化をするなら、日本は頭脳と戦略でしょうか。中国のスピードとパワーを抑え、韓国にはフィジカル勝負に持っていかせないために、相手の穴を狙っていくのが日本の強みと言えます。
そのうえで、フィジカルのレベルが上がってきました。韓国にもひけをとりません。長距離走は互角で、瞬間的なパワーではやや劣るかな、というぐらいの差です。いきなりダッシュをしたら韓国の選手のほうが速い、というイメージです。
韓国に見劣りしないということは、日本のフィジカルは世界レベルということです。
これについては、2004年から日本代表のヘッドコーチをしている韓国人の朴柱奉(パクジュボン)さんのおかげです。朴さんは日本バドミントン界の改革者です。
苛酷なトレーニング
私は青森山田高校卒業後の2007年に、初めて日本代表に選ばれました。それが朴さんとの出会いだったのですが、何が大変だったかと言うと、もういままで経験したことがないぐらいに練習で追い込まれるのです。シングルスやダブルスの種目ごとのトレーニングが始まる前、つまりラケットを握る前に、1時間ぐらいみっちりフィジカルトレーニングをやって、それから2時間半の打ち込み、とか。午後にもまた、トレーニングがあって。
身体にかかる負担は言葉では表現できないぐらいで、「日本代表に残っていくには、ここまでキツいことをやらなきゃいけないのだ」と思わされました。最近では「合宿恒例の苛酷トレ」などと報道されているようですが、日本代表のトレーニングに慣れるまでに1年以上かかりました。
そんなに時間がかかるのか、と思う方がいるかもしれません。日本代表は国内でトレーニングするだけではなく、海外へ遠征します。その間にも所属チームで試合があります。1年間のスケジュールに身体が慣れるまでに、1年以上かかったということです。「海外へ移動して気候の変化が激しくて、ちょっと疲労も溜まっているから、気をつけないと風邪を引いちゃうかも」とか、「このまま追い込んだら、ケガをしちゃうかも」とかいうことを気にしなくなったのは、2年目以降でした。
日本代表の合宿の回数も、朴さんがヘッドコーチになってから増えました。
実は朴さんが指導をしている以前にも、日本代表に招集されたことがあります。北京オリンピックへ向けた強化指定選手を集めて……といったような趣旨で、中学生から大人までが一緒に集まって合宿したのです。中学生からは3人で、そのうちのひとりが私だったのですが、当時は1年に数回しか強化合宿は行なわれていませんでした。