2025年12月6日に高知駅前観光が本格運行を開始した寝台夜行バス「FLATON(フラットン)」は、その名の通り、完全に水平な状態で眠れるフルフラットシートを搭載している。マット・毛布も完備で「ベッドに近い座席が搭載されている」と言ってよい状態だ。なかなか斬新なコンセプト・車内風景から、SNSでは「乗り心地はどんな感じなんだろう」といった疑問だけでなく、「現代の奴隷船」といった衝撃的な感想もあがっている。

高知駅前観光の「フラットン」(筆者撮影)

 一般的な夜行バスは、あくまでも「リクライニングシート」で、120~150度くらいしか背もたれが倒れない。走行中のバスの中でひと晩を過ごす上では、やはりつらい。対して横になれるフラットンの乗り心地は、果たしてどのようなものか。全国47都道府県の夜行バス・高速バスをほぼ制覇した筆者が、実際に検証してみた。

通常の夜行バスとの価格差は「わずか数千円」

 今回筆者が乗り込んだのは、12月6日・高知発のフラットン第1便だ。当日は9時40分に高知駅バスターミナルを発車するバスを待ち構えて、カメラを手にした多くのファンが、沿道に集まっていた。

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 待ち構えている人々に話を聞いたところ、初日の運行とあってほとんどが「本格運行の初日に乗車したかった」というバス好きの人々であった。ただ、高知駅前観光はもともと高知~東京間で4列シートの高速バスを運行しており「東京で暮らす子供や孫に会いに行く。ふだんのバスより運賃が高額だったものの、予約が取れたので乗車してみた」という普段使いの方も何人かいた。

高知駅に到着した「フラットン」(筆者撮影)

 この日のバスはもちろん全席完売。発車10分前に到着したバスに、乗客が次々と乗り込んでいく。車内は土足厳禁のため、全員が靴を脱いで乗車するのに時間を要した。

 ちなみに通常の夜行バスとフラットンではどれだけ値差があるのだろうか。高知~東京間で運行しているものでざっと比較すると、次のようになる。

・高知駅前観光「フラットン」:上段1万7000円、下段1万5000円程度(料金は変動制、以下同)
・高知駅前観光「スマイルライナー」(4列・リクライニングシート):7000~1万3300円程度
・琴平バス「KOTOBUS EXPRESS」(3列・リクライニングシート):8400~1万3400円程度

 リクライニングシート搭載の夜行バスとは、運賃にして数千円の差がある。新幹線駅が遠い高知県では長距離移動を飛行機に頼りがちだが、こちらは3万~4万円の運賃を要する上に、客層も違うため比較対象にはならないだろう。