どんな層に向けたサービスなのか
近年、地方発で首都圏に向かう夜行バスの乗客増加が激しいという。その背景には首都圏のホテル料金高騰があり、フルフラットシートを搭載したフラットンの今後の動向にも関わってきそうだ。
2019年頃まで首都圏のホテルはそれなりに安価で、1泊1万円以下でも十分に宿泊できた。しかし、インバウンド観光客の増加などで近年は2万円近くを推移している。こうなると「前日に都内へ前乗りして宿泊」を「夜行バスで移動・翌朝に都内到着」に切り替える人々が多いのは、至極当然のこと。
ただ、リクライニングシートでの高速バス移動は体の負担が大きく、少しお金をかけても、良いシートに座りたいという需要が出てきているのだ。フラットンの狙いはまさにこの層にあり「ホテル代は節約したい。でもリクライニングシートは疲れるので、もっと良い席で移動したい」という人々の、スキマ需要に勝ち筋があると言えるだろう。
なぜ、これまで「フルフラットシート」がなかったのか
ここで気になるのが、なぜ大阪や名古屋といった地方都市ではなく、四国に拠点を置く高知駅前観光がフルフラットシートを開発したのか、である。
そもそもフラットシートやベッドタイプのバス座席は、ベトナム・アメリカなど海外では当たり前のように存在する。これを日本でも導入できないかと高知駅前観光が2018年に国土交通省に確認したところ、「(寝台バスに関する)取り決めやガイドラインは存在しない」との回答が返ってきたという。
つまりフルフラットの夜行バスは「禁止」ではなく「誰も実現に向けて動いていなかった」だけだったのだ。高知駅前観光の梅原章利社長は「フルフラットの夜行バスは法的に問題がある」という勝手な思い込みを各社がしてしまっていたのでは、と話す。
その後、同社はフルフラットシートを開発し、全国のバス関連会社が出展する「バステクフォーラム」に参加したところ、業界の関心が最高潮に達した。

