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“静かなギャンブラー”森保一監督が勝った決死の“賭け” サッカー日本代表「メダル獲得」のある条件とは?

2021/07/31
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選手をいかに休ませるか…森保監督の決断は? 

 この采配は「思った以上に手堅くきたな」という印象だった。

 オーバーエージの酒井宏樹、遠藤航を「どちらかは休ませるのではないか?」と思ったが、森保監督は、あえてそうしなかった。

オーバーエージ枠の酒井宏樹 ©JMPA

 ここまでほぼ同じメンバーで試合をし、経験を積み上げてきたことでチーム力を上げている状況と、相手がフランスと考えれば説得力はある。だがここで疲労度の大きい死闘を繰り広げたとなると、決勝トーナメントに入ってから、きっと反動がやってくる。これはこれで、指揮官にとっては大きな賭けだったに違いない。

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 結果的に、采配はズバリ当たった。

 フランスの出方を見ながら試合をスタートさせ、日本はゆったりと構えながらも縦パスのスイッチを入れるタイミングを模索していくという流れ。前半27分、田中碧の縦パスから久保建英、上田と渡ってシュートまで持っていき、GKが弾いたところを久保が右に流し込んで先制。その7分後には久保のパスから上田がシュートし、またしてもGKに弾かれたものの、今度は酒井が押し込んで追加点を挙げた。

久保は3試合連続ゴールをマークするなど活躍 ©JMPA

 フランスのヤル気を削ぐのに、「前半2点リード」はかなり効いた。

 サッカーは何が起こるか分からないとはいえ、フランスから残り45分で4点を取られ、なおかつこちらはノーゴールという展開は、確率的には極めて低くなったからだ。

リードの広がった後半から一気に選手交代!

 第1戦は2枚、第2戦は1枚と交代カードを残してきた指揮官は、フランス戦の後半から一気に交代を進めていく。ハーフタイムで3戦連発中の久保をベンチに下げて三好を投入。後半10分には累積警告で次戦出場停止となった酒井に代わって橋岡大樹を送り出した。次の試合で先発起用を考えているなら、実戦で慣らしておくことは大切だ。

 ここまで働き詰めのボランチコンビの遠藤(後半27分)、田中(同34分)をベンチに下げることもできた。計5枚のカードを使い切り、かつ交代で入ってきた三好と前田大然が後半にゴールを奪っている。申し分ない。

 ベストに近いメンバーで臨み、前半で勝負の趨勢をある程度決め、余力を残す形で順に交代させていく――。グループリーグ3連勝は出場16チームのなかで日本のみ。勢いをつけてノックアウトステージに入れることも非常に大きい。