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“静かなギャンブラー”森保一監督が勝った決死の“賭け” サッカー日本代表「メダル獲得」のある条件とは?

2021/07/31
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森保スタイル=「先制点をやらないサッカー」

 森保スタイルを一言で表現するなら「先制点をやらないサッカー」である。指揮官はサンフレッチェ広島で3度J1を制しているが、チームの共通理解としてそれがあった。

 森保監督に広島時代を振り返ってもらったことがある。

「選手にはタフに粘り強く、最後まで戦い抜き、したたかに勝負をものにしていこうと口を酸っぱくして伝えていました。先に点を与えない、先制したら勝負に結び付けられるように。相手は失点したら前に出てくるので、ボクシングじゃないですけどカウンターパンチを狙う。相手の状況を見ながら勝っていくことで(チームの)クオリティーが少しずつ上がっていったところはありました」

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意外とギャンブラーな森保監督。狙うは金メダルのみ…? ©JMPA

オーバーエージ枠の3選手も守備重視

 彼のポリシーは、代表チームにも反映されている。

 オーバーエージ枠の3枚を吉田、酒井、遠藤と“守備重視”にしたことで、後ろの守備陣の安定感が増し、「先に点を与えない」強度が高くなった。そうなれば「先に点を取る」ミッションに意識を向けていくことができる。

 守備で崩れなければ、こっちのものだという感覚なのだろう。

オーバーエージは吉田麻也らディフェンス選手で固めている ©JMPA

 初戦の南アフリカ戦は我慢しながら後半なかばにゴールを奪った。

「先に点を与えない」があるから、時計が進んでも焦りは見られなかった。メキシコ戦は意図的に最初から飛ばして、相手のエンジンが掛からないうちに2点をゲットした。終盤はゴールを奪われて受けに回ったものの“先制パンチ作戦”ならこれも想定内だったはず。まさに相手の状況を見ながら勝っていくクオリティーがチームから感じられる。A代表、東京五輪代表を兼任し、植えつけてきたポリシーを選手たちが表現しているように映る。

 終盤に出てくる前田大然が、攻守においてどれほど相手の脅威になるのかも確認できた。収穫の多いグループリーグの戦いであった。