児童向けテレビ局は「シモーンとなおみに花束を」と
米国の黒人スイマーが初めてオリンピックに出場できたのは2000年のシドニー五輪だ。ヴィーナス&セリーナ・ウィリアムス姉妹が登場するまでテニスにも黒人選手はほとんど存在しなかった。体操も、2012年のロンドン五輪でギャビー・ダグラスが個人総合と団体で金メダルを得て一躍時の人となるまで、黒人選手は極端に少なかった。
いずれの種目もアメリカでは公立学校で習う機会がなく、有料の教室は白人の生徒ばかりで黒人にはなかなか入っていけない世界だった。
それでも時代が進み、黒人女性アスリートが活躍を始めた。選手が名をはせる程、私生活も明らかにされていく。バイルス選手の複雑な家庭環境、ADHDであること、なによりも米女子体操五輪チームの元医師による性的虐待の被害者であったこと。他方、大坂なおみ選手は日本人であり、ハイチ人であり、同時に黒人でもあるアイデンティティーを自覚し、批判されようともBLM活動を続けた。
その2人が相次いでメンタル・ヘルス問題を抱えていると公表し、敗退/棄権した。米国社会とスポーツ界は「弱み」を見せたとして2人を激しく非難している。だが、これまでタブーだったメンタルヘルス問題を明らかにしたことで、多くのメディアが「ノーと言うパワー」などと2人を賞賛。各界の黒人女性たちも両選手への支持を表明している。
コリ・ブッシュ(ミズーリ州選出下院議員)
私はシモーン・バイルスと共にある。/私は今も大坂なおみと共にある。/あなたたちの健康と平和は大切。あなたたちは黒人女性も自身のために必要な場を得られるのだと思い出させてくれている。
コール・アーサー・ライリー(作家、講話家)
他者の「偉大さ」の定義のために自分自身を殺すことを断る黒人女性たちに感謝する。/あなたたちは共に価値がある。/あなたたちの境界線は聖域。
同様のメッセージは黒人の幼い少女たちにも伝えられている。カートゥーンネットワーク・チャンネルは、シモーン・バイルス選手と大坂なおみ選手の『パワーパフガールズ』のイラストを製作した。米国および日本における黒人女性のあり方を、シモーンとなおみは大きく変えていくのである。