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五輪で不当な扱いを受けた、黒人女性アスリートたち

 今回の五輪において不当な扱いを受けた黒人女性アスリートは、大坂選手とバイルス選手だけではない。米国女子陸上の新たなスターであり、東京オリンピックでは100m走での金メダルを期待されていたシャカリ・リチャードソン選手は、五輪不出場となった。

 6月の米国代表選考会の薬物検査で陽性と出たために30日間の出場停止を命じられ、したがってオリンピック欠場となった。リチャードソン選手は代表選考会の数週間前にインタビューを受けた際に、記者から「生母の死」を知らされ、そのショックを和らげるためにマリファナを使用したと語った。

 生母の死を記者から知らされるという事態がどのようにして起こったかは不明だが、同情の余地は十分にあると言えるのではないか。かつ全米各州で次々とマリファナ合法化が進んでおり、リチャードソン選手がマリファナを使用したのも、すでに合法化されていた州だった。

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 2016年リオデジャネイロ五輪の女子100mハードルで金メダル獲得のブリアナ・マクニール選手も東京五輪への代表選考会を突破しながら、その後に出場資格を剥奪されている。マクニール選手は昨年1月に中絶手術を受けており、手術の2日後の薬物検査を受けられなかった。これにより5年間の出場停止となっている。

開会式で上がった花火を見上げる人びと ©JMPA

「Soul Cap」問題も持ち上がった。ソウル・キャップはイギリスの黒人男性2人が立ち上げ、すでに米アマゾンなどでも販売されている黒人用の水泳帽のブランドだ。

 黒人特有のヴォリームのある髪が収まるよう一般的な水泳帽よりも大きなサイズとなっているが、素材は他のブランドと変わらない。にもかかわらず、同社がFINA(国際水泳連盟)に五輪でのソウル・キャップ使用許可を申請したところ、却下されたのだった。

 FINAは水泳界の多様性を訴えながら黒人スイマー、特に長い髪を持つ女性スイマーが苦心して髪を水泳帽に押し込み、頻繁にずれるたびに直さなければならない不便を解消させなかった。