大坂なおみが引き金を引いた全仏オープンでの記者会見拒否騒動は、1回戦を勝利した大坂の大会棄権という最悪の事態を招いてしまった。
「トーナメントや他の選手たち、私自身の健康のために今できる最善の策は、私が棄権すること。そうすれば、またみんながパリでのテニスに集中できるようになる」
SNSに心情を綴った長文にはそのようにあったが、要は「自分がいれば邪魔になる」ということであり、グランドスラムというテニスプレーヤーにとってもっとも大切な舞台を棄権する理由としてはかつて聞いたことのない言葉を残し、大坂はパリを去った。
「今回は空気を読み間違えたのでは」という厳しい見方も
1回戦勝利で獲得した1100万円あまりの賞金に対し、その後の会見拒否で科された罰金は約165万円。額自体は大したものでないかもしれないが、これで一件落着となるはずもなく、大坂が長い間の“Depression(うつ症状)”を告白したことで今回の騒動の根の深さが浮き彫りとなった格好だ。
棄権する前に、グランドスラム委員会が声明で明らかにした「全ての四大大会の出場停止の可能性」も今や宙ぶらりんの印象である。
当初、主に海外の記者たちの反応は大坂の求める〈改善〉の提案に懐疑的だった。
「今の記者会見のシステムはうまくいっている。おかしいと言っているのは大坂だけなのに、なぜシステム全体を“改善”する必要があるのか」という意見がおそらく大半を占め、「BLM(ブラック・ライブズ・マター)運動が賞賛されたことで、オピニオンリーダーを自負して今回の行動を起こしたが、今回は空気を読み間違えたのではないか」といった厳しい見方もあった。
大坂は棄権を表明した投稿の中で「テニスの記者の皆さんはいつも私に親切でした。特に私が傷つけてしまったかもしれない全ての素敵な記者の方たちに謝りたい」と綴ったが、両者の立場の溝は深い。