さまざまな形態の石彫が配された空間の中央には、150灯の「あかり」が掲げられている。竹ひごで自在にかたちをつくったうえに和紙を貼って立体とし、それらが内側から照らされて輝く。ノグチがこれを照明器具ではなく「光の彫刻」と位置づけていた意味がよくわかる。
自然をよくよく見つめ、戯れる
第2章「かろみの世界」では、金属板を折り曲げたりしてリスや雲などをかたどった立体物が目を惹く。日本の折り紙が着想の源泉になっているようだ。太い鋼管を用いてうねうねとしたかたちを造った《プレイスカルプチュア》は、子どもならずともついよじ登ったりしてみたくなる。そうイサム・ノグチの作品はどれも、遊び心をくすぐるチャーミングさを備えているのだと気づく。それが彫刻という存在を、グッと親しみやすいものにしてくれている。
3章「石の庭」の空間で展開されるのは、香川県にあるイサム・ノグチ庭園美術館から運ばれてきた大型石彫群。これらはノグチ最晩年の創作にあたる。3メートルの高さを持つ《ねじれた柱》は、もちろん全面的に人の手が入っているのだろうが、どちらかといえば壮大な自然物と遭遇したときの迫力を感じる。
生前のノグチはこう述懐していた。石と向き合っていると声が聴こえてくるので、自分はその声に沿ってちょっとだけ手助けするだけだ、と。
ありのままの自然をよくよく見つめ、そこに遊び心と自由な想像力を持って最小限の手を加え、最大の効果を生み出す。イサム・ノグチの創作の過程とそこに込めた想いが、しかと伝わってくる見事な展示だ。ノグチの潔い性向が影響してか、どの章の展示も清涼感が漂うので、暑さ避けにももってこいである。
INFORMATION
「イサム・ノグチ 発見の道」
4月24日~8月29日
東京都美術館
https://www.tokyoartbeat.com/event/2021/D1CA