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「五輪で風化させたくない」熱海土砂災害から1ヶ月 元AKB“旅館若女将”が語る被災地の「深刻な状況」

genre : ニュース, 社会

 静岡県熱海市で発生した土石流災害から8月3日で1ヶ月が経った。

 被災した伊豆山地区では23名が死亡、今も行方不明者4名の捜索が懸命に続けられている。熱海市では発災時刻にあわせて黙祷がおこなわれた。

いまも複雑な熱海市民の胸中

 都心からわずか40分、温泉街として名高い熱海でおきた災害は、コロナ禍で痛手を受けている観光業に追い討ちをかけた。市民の胸中は複雑だ。

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「行方不明者の捜索が最優先。全員みつかってから初めて前をむける」(タクシー運転手・60代男性)

「今はコロナ禍だし、老人も多い街だから観光客は来なくていい」(主婦・70代)

「熱海は観光の街。災害に区切りをつけ、そろそろ観光に力を戻さないと生活が破綻する」(土産物店店主・50代女性)

 多くの市民が不安を抱えるなか、元AKB48のメンバーで熱海市出身の島田晴香(28)は8月1日「熱海市・大雨土砂災害復興支援プロジェクト」というクラウドファンディングをたちあげた。

©文藝春秋/上田康太郎

 島田の実家は熱海市の中心部にある老舗旅館「立花」。島田は2017年にAKBを卒業後、自身の会社を経営する傍ら旅館の若女将として家業の広報・接客を担当している。「文春オンライン特集班」は8月2日、家業を手伝う島田に話を聞きにいった。島田は「少しでも熱海の現状を知ってもらえるなら」と取材に応じた。

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テレビで見てるような感覚になっていた

――土砂災害が発生した時、島田さんは何をされていましたか?

島田 私はその時ちょうど仕事で熱海を離れていて、災害をニュースで知りました。どういう状況なのか、自分の目で見ないと不安で仕方なく、すぐに引き返しました。新幹線もどうなるか分からない状況で、国道も有料道路もどっちも通れなくなってしまったので、山梨県の方から回って、2~3時間かけて車で熱海に戻りました。

©文藝春秋/上田康太郎

 私たちの旅館は、伊豆山地区から距離もあるのでライフラインも含めて無事でした。ですが、被害にあった場所ではバスが半分土砂に埋まっていたり、「本当に自分が普段通っていた道なのか…」というくらいに酷くて。自分の街でこういう災害が起こったということが、現場にいるけど実感がないというか…テレビで見てるような感覚になっている自分もいました。