昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

《スケートボード》金メダリスト堀米雄斗と予想外にバズった解説「彼、スケボー上手いっすね」「鬼やべー」の知られざる真意――東京五輪の光と影

2021/08/12

 開会式直前の関係者“辞任ドミノ”に始まり、メダル候補のまさかの敗戦やダークホースによる下馬評を覆しての戴冠劇、コロナ禍で開催され、明暗含めて多くの話題を呼んだ東京オリンピック。ついにその長い戦いも閉幕しました。そこで、オリンピック期間中(7月23日~8月8日)の掲載記事の中から、文春オンラインで反響の大きかった記事を再公開します。(初公開日 2021年7月26日)。

*  *  * 

 “歴史的ターニングポイント”、“カルチャーからスポーツに”、“世間の偏見が賞賛に” ……わずか1日にして取り巻く環境がガラッと変わってしまったものがある。

 その競技はもちろんスケートボードである。金メダルを獲得した堀米雄斗の名前は、1日で日本中に知れ渡ったのではないだろうか。

スケートボード男子ストリートで金メダルを獲得した堀米雄斗選手 ©KaoruWatanabe/JMPA

練習の虫

 今回の彼の滑りを見て、多くの方が冷静、落ち着いているという印象を持ったかと思う。とてつもなく難しいトリックを、いとも簡単そうにこなす。それが彼のスゴいところなのである。

 気心の知れた仲間の中では、彼は「練習の虫」で有名だ。ただひたすらに黙々とひとつのトリックをやり込む。それも成功するまで絶対に帰らない。言い換えれば周囲がドン引きするほどの練習量で身につけた努力の賜物なのである。

 しかもケガも一度や二度ではない。筆者は彼がギプスを巻いて滑る姿を何度見たことか。挙げ句の果てには、コンテスト中に身体を強打し、救急車で運ばれていく様もこの目で見ているのである。しかし、ケガは勲章とはよく言ったもので、ギプスがとれて滑る姿を見るたびにどんどんとスキルアップしていったのもまた事実。

 そうやってひたすらにスケートボードと向き合い続けてきたからこそ自分を信じることができ、それがあの落ち着いた滑りに繋がり、ベストトリックでの大逆転劇を生んだのではないかと思う。

かけがえのない親友との決勝前のやりとり

 その彼のひたむきさを最も間近で見てきた親友であり幼馴染み、彼の影響でスケートボードを始めた同級生の松本崇も、「絶対にやってくれる!」と信じていたそうで、当日のこんなエピソードを語ってくれた。

©KaoruWatanabe/JMPA

「大会前はだいたいいつも彼と話しているんですけど、実は今回は予選終了後にわずかだけどテレビ電話を繋いで話したんです。決勝までの時間は少ししかなかったので、会話自体は『頑張れよ!』って自分が言って、彼が『あとはやるだけだよ』っていう程度の短いものだったんですけど、言葉にせずともその表情からは彼の強い意思がヒシヒシと伝わってきましたね。なんかやってくれる予感がしたんです」