文春オンライン

2021/08/12

 これを聞くと、たとえ何気ない一言でも、自身が有名になるずっと前から毎日一緒にいた親友からのものだったのが、堀米にとってメンタル面で大きなプラスになっていたのではないだろうか。彼の周りには、そういった仲間が他にも世代問わずたくさんいる。それも彼の言動からくる、人を惹きつける人間性なのだろう。

「スケボーは今までチャラいイメージだったけど、彼のメダルでイメージが変わりました」

 そんな声を数多く聞く。人々の価値観を変えた堀米雄斗は、スケートボードの歴史に新たな1ページを刻んだことは間違いない。

予想外にバズった“フランクすぎる”解説

 一方で、人々の話題になったのがNHKの実況解説だ。「鬼やべー」や「ハンパないっすね」「彼、スケボー上手いっすね」など発する言葉に注目が集まったのである。その人物は瀬尻稜。堀米雄斗の1世代上に当たる、日本を代表するスケートボーダーの一人である。彼の残してきた実績も申し分なく、五輪に出ている選手たちとも過去に対戦した経験を持つ。

2015年の五輪追加提案競技決定時の記者会見における堀米(中央左)と瀬尻(中央右)。仲の良いカメラマンに一瞬だけ見せてくれた瀬尻のユニークな表情は、今思うとあの”フランクすぎる”解説に繋がっていたように思えてならない ©Yoshio Yoshida

 それだけあって解説に値する知識も十分に有しているのだが、その言葉使いが大いに視聴者にハマったのだ。一言で言うと、スケーター同士の会話を丁寧にした感じと言えばいいだろうか。このあたりにスケートボード特有のカルチャー的側面や自由な風潮が見え隠れするのだが、「やべー」はある意味スケートボードの専門用語とも言える部分があり、そうなると相手に対する最大級の賛辞と解釈できるのだ。

 そもそもスケートボードはカルチャーとしての成り立ちから、「やべー」に限らず専門用語や独特の言い回しが非常に多く、専門誌と一般紙では同じことを伝えても言葉の選び方が全く変わってくるし、こういったところもスケートボード文化のひとつであると言える。