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「ともかく実力を見せるほかないと思いました」

 キム選手は、「最初はしんどかった。日本のバレーの実力が韓国よりも上だという考えから私を認められないような雰囲気がありました。(日本の)選手も少し私を見下しているような気もして、ともかく、実力を見せるほかないと思いました(中略)それでもプレイが生きてくると選手たちから認めてもらえるようになって少しずつ寂しさなども忘れていったように思います」(日曜新聞、2012年8月19日)と当時の心境を語っていたが、こうも振り返っている。

「JTマーヴェラスは今までのバレーボール人生の中でいちばん成長させてくれたチーム。この2年間がなかったらヨーロッパでの活躍もなかった」(『Number』、2012年7月6日)

 当時のJTマーヴェラスには、2012年のロンドンオリンピックで日本代表を銅メダルに導いたスター、セッターの竹下佳江選手が在籍していた。キム選手は「世界的に有名なセッターのトスを打てる喜び」を語り、「特にテンさん(竹下)から学ぶことが多かった」(同前)と回想している。この竹下と共にチーム開幕25連勝の立役者となり、2010-11シーズンではMVPを獲得した。

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キムが「テンさん(竹下)から学ぶことが多かった」と語った竹下佳江(右から2番目) ©文藝春秋

 2011年にはトルコの最強チーム「フェネルバフチェ」に移籍。翌年チームは欧州チャンピオンとなり、キム選手はアジア人としては初めてMVPを獲得。2017年には上海国華人寿チームに移籍し、翌年には再びトルコの「エジザージュバシュ」に移籍するなど海外で活躍した。

 韓国に戻ったのは2020年。11年ぶりに古巣「興国ピンクスパイダーズ」に復帰した。新型コロナの影響と東京五輪に向けたコンディション作りのためといわれた。キム選手の復帰で、「興国ピンクスパイダーズ」は“無敵のチーム”と持て囃されたが、好事魔多し。

 同チームのイ・ダヨン選手が先輩からイジメを受けていると匂わせるコメントを自身のインスタグラムに投稿し、すぐにこの先輩はキム選手といわれ、ふたりの不和説が浮上。当時、イ・ダヨン選手は双子の姉イ・ジェヨン選手とともに韓国ではスター的な存在で、スターどうしの不和説に韓国女子バレー界は騒然となった。

発端となった韓国バレー「美人姉妹」、イ・ジェヨン選手(左)とイ・ダヨン選手 ©共同通信社

 が、ほどなく、キム選手はクールに認め、「自分たちはプロなので話し合う」と語り、収拾するかに見えたのだが、この問題に端を発し、イ姉妹の学生時代のイジメ問題が発覚。これはサッカーなどの他のスポーツ界、芸能界を巻き込む大騒動となった。

 イ姉妹の10年前のチームメイト4人はイ・ダヨン選手のインスタグラムの投稿を見て告発を決意したことを明らかにし、イ姉妹から暴力やイジメを受けたことを21個のリストにして訴えた。