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 もっと正直に言ってしまう人も。自民党の河村建夫元官房長官は、

「五輪がなかったら、国民の皆さんの不満はどんどんわれわれ政権が相手となる。厳しい選挙を戦わないといけなくなる」(共同通信7月31日)

 政権による五輪の政治利用と選挙利用を認めました。

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東京五輪による「高揚感」の結果…

 菅首相も五輪に夢中です。日本勢初の金メダルを獲得した柔道選手に電話した。明るいムードを演出する戦略なんでしょうが、原稿らしきものを見ながら電話するって振り込め詐欺グループを想起させてむしろ不穏でした。

 ここであらためて振り返りたいのは「高揚感」です。菅首相はこれに期待していました。確かに朝から晩までテレビで五輪をやっていれば高揚感とまでいかなくても開放感は感じます。

 その結果…。

 西村康稔担当相は「そのままの高揚した感覚で外出してしまうと、感染力の強いデルタ株はちょっとした隙で感染を広げてしまう」と述べた(衆院議院運営委員会・7月30日)。

田村憲久 ©文藝春秋

 田村厚生労働大臣はNHKの「日曜討論」で、感染力の強い変異ウイルス「デルタ株」の広がりで局面が変わっているとして、感染リスクの高い行動などを控えるよう、重ねて国民に理解と協力を呼びかけた(NHK8月1日)。

 両大臣があたふたしている。高揚した感覚で外出しないよう、大臣がわざわざ言う事態にまでなった。

「お祭りムード」のしっぺ返し

 しかし週明けの読売新聞オンラインは次の事実を伝えた。

『都内週末の人出、五輪会場周辺では3割以上増加…緊急事態宣言の効果発揮されず』(8月2日)

 ああ…。

 これまで安倍・菅政権は説明や論理を軽視してムードを利用して押し切ってきた。今回しみじみしてしまうのは、ムードを利用してきた政権がムードに打撃を受けていることだ。自分でお祭りムードを期待していたのに強烈なしっぺ返しを食っている。さらに言えば国民が五輪に高揚したとしてもそれが菅人気につながるかは怪しい。つまり元も子もない。

 そして危惧されているのは「デルタ株」である。