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「手術は避けられない状態だった。球団は国家代表の試合を諦めてすぐに手術を受けることを勧めたが(キム)選手は自分がいれば本選に進出できると責任感に燃えていた。(中略)『ああ、シッパン。プレイしないと。選手ですよ。代表選手なんです。選手は試合でプレイしないと。痛みはいつものことなのに』。

 結局、彼女は『シッパン』と繰り返しつぶやいて声を押し殺して涙を流しながら、手術の同意書にサインしました」(ソウル新聞、8月5日) 

  シッパンとは韓国語で食パンのこと。自身が悔しかったり、相手を罵る時にも使う韓国語の別の言葉と発音が似ていることから、キム選手が表現を和らげるために置き換えてよく使っている言葉で、「食パンオンニ」はキム選手の異名のひとつだ。 

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心配されていた、“神セッター”の不在

 オリンピックでの大躍進に女子バレーの他の選手にもスポットライトが当たっている。 

 オリンピック前、実は韓国女子バレーチームには戦力不足が囁かれていた。実力、人気ともにスターだった双子の姉妹、イ・ジェヨン、イ・ダヨン選手のふたりが抜けたためだ。 

 これは今年2月に韓国中が大騒ぎとなったイジメ問題に端を発している。 

イジメ問題で国家代表権を剥奪された韓国バレー「アイドル姉妹」、イ・ジェヨン選手(左)とイ・ダヨン選手 ©共同通信社

 昨年末、イ・ダヨン選手は自身のInstagramに同じチームにいたキム・ヨンギョン選手との不和を匂わせるような書き込みをし、物議を醸した。キム選手はクールにこれを認め、「プロなので話し合う」と話して事態は収拾するかに見えたが、今度はイ姉妹の10年前のイジメ問題が告発により明るみに出た。

 イ・ダヨン選手の書き込みを見たかつてのチームメイト4人が告発を決意し、ふたりから受けたイジメの内容をコミュニティサイトに書き込むと、波紋はあっという間に広がった。これは、他の競技や芸能界も巻き込んでの大騒動となった。     

 ほどなく、イ姉妹ふたりは過去のイジメを認め、所属していた「興国生命ピンクスパイダーズ」はふたりの試合出場を「無期停止」とした。韓国バレーボール協会はふたりの国家代表権を無期剥奪。これによりイ姉妹の東京オリンピック出場も消えた。

 しかし、レシーブにも定評があったレフトWSのイ・ジェヨン選手と、相手の動きを読んだトス回しができるといわれたセッター、イ・ダヨン選手の抜けた穴は大きいと囁かれた。