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「自分が受け入れられた感覚がない人って、苦しさを抱えている」 『九条の大罪』の真鍋昌平が“お金がない時代”に大切にしていたこと

真鍋昌平さんインタビュー#2

2021/08/30

「これしかない」という形で終えることができた「ウシジマくん」

──『闇金ウシジマくん』は、原作漫画はもちろん、実写化したドラマや映画なども爆発的にヒットしました。あれだけの人気漫画を終わらせることに葛藤や迷いはありませんでしたか。

真鍋 もちろんありました。でもあるときから自分の中で「ウシジマくん」がマンネリ化してきて、このまま「ウシジマくん」の連載を続けていたら、自分が腐っていくなと感じていたので、これはもう(連載を)終えなければいけないと思いました。

 正直怖い部分もありましたが、人気がなくなってきたから終わりにするのではなく、ちゃんといいところで終わらせて次に余力を残す形にしたい、という思いもありました。

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──『ウシジマくん』のラストは賛否両論を巻き起こしました。ベストエンドは必ずしもハッピーエンドではありませんが、真鍋さんにとってのベストエンドとはどういうものですか。

真鍋 ハッピーエンドかどうかというのは自分の作品ではあまり考えていません。それよりも、読んだ人の感情が揺さぶられてストーリーが盛り上がっていき、きれいに終わりに向かっていけるかどうかということを重視しています。

『ウシジマくん』では、自分のなかで着地点を決めていたので、最終回のストーリーは「これしかない」という形で終えることができました。大きな反響をいただけて、それだけたくさんの方が関心を持ってくださったことに感謝しています。

──『ウシジマくん』連載終了から新連載開始まで1年半の期間が空いたのは、デジタル化への移行準備などがあったからですか。

真鍋 キャラクター像を形にするのに時間がかかったということもありますが、デジタル化する際にタッチや雰囲気を自分のなかで大きく変えたので、それを調整するのに時間がかかってしまいました。大変な部分もありますが、今までの自分がやっていた以上のことができているので、いま、めちゃくちゃ楽しいです。

お金があるから幸せ、貧乏だから不幸ではない

──閉塞感の強い今の時代を「楽しく」生きられない人も多くいます。どうすれば「楽しく」生きられると思いますか。

 

真鍋 自分自身をふりかえると、楽しむことだけは大事にしていたように思います。お金がなくて店に食べに行けない時は、スーパーで食パンを買って、肉屋で買ったアツアツのコロッケをはさんで食べるとか、美容院に行くお金がなかった時は、当時つきあっていた彼女に神社の境内で髪の毛切ってもらうとか。髪を切ってもらった時は、バチがあたらないようにキレイに掃除して帰ったことまで含めて楽しかった。お金がなくても、毎日一生懸命楽しんでいたなと思います。

 取材対象者と話していても感じるのですが、社会って、お金があるから幸せ、貧乏だから不幸という単純な構造ではないと思います。お金があってもなくても、自分が受け入れられた感覚がない人は苦しさを抱えています。アクションを起こす時に、自分が相手を喜ばせたいと思ってするのはいいですが、相手に気に入られたいからするというのはやめたほうがいい。自分が自分でなくなっていくので、苦しくなると思います。

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