伝説的漫画『闇金ウシジマくん』(小学館)の作者・真鍋昌平さんの『九条の大罪』(小学館)の第3集が、8月30日に発売される。主人公は、裏社会が絡む案件を扱う弁護士・九条間人(くじょうたいざ)。第3集では、反社会的勢力や欲にまみれた弁護士とつながる悪徳介護事業者、半グレを小間使いにするヤクザらと、九条との駆け引きが生々しく描かれる。真鍋さんが社会の暗部を直視する理由について聞いたインタビューを再公開する。(全2回の2回目。1回目を読む)
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毎日楽しいと思いながら漫画を描いています
──『ウシジマくん』は描くのにかなりのエネルギーが必要だったと伺いました。今回の『九条の大罪』は、いかがですか。
真鍋 裏社会の闇を描いた『ウシジマくん』は、犯罪者目線の物語なので、嫌悪感を持たれることも多く、自分自身でも描いていてグッタリ疲れることがありました。今回は同じ世界を描きながらも、「弁護士」という法の立場から描いた物語です。『ウシジマくん』より読みやすくできるだろうと思って描き始めたのですが、より人の深い部分をえぐり出すことになってしまいました。
今はコロナのせいで、気分転換によく行っていた飲み屋にも行けないので、発酵食品を食べたり、犬と走ったりしてストレスを発散しています。
──健康的ですね。
真鍋 積極的に健康的な生活を送っているわけではないんですよ。あまりにも不健康でストレスがたまるので、仕方なく発酵食品を食べたり、野菜をたくさん入れたみそ汁を飲んだり、犬の散歩で走ったりしているだけです。
これは作品を描く上でもそうですが、生きる上で基本的に「どうやったら楽しくできるか」を大事にしているので、やりたいことをまずやってから、あとは帳尻合わせをしている感じです。
『九条の大罪』から制作スタイルも変えました。これがさらにいい効果で。毎日楽しいと思いながら漫画を描いています。
フルデジタル化はちょうどいいタイミングだった
──どのようにスタイルを変えたのですか。
真鍋 作画をフルデジタルに変え、それに伴ってアシスタントも全員リモートに切り替えました。数年前から考えてはいたのですが、絵の雰囲気が変わってしまうので、新連載からやろうということであたためていました。
折しもコロナでアシスタントが集まって作業するというのが難しくなってしまったので、ちょうどいいタイミングだったかなと思っています。これまでもアシスタントとは部屋をわけて作業していましたし、隣の部屋から各自の自宅へと変わっただけで、特に不自由は感じていません。
そうはいっても、取材対象者も含め、『ウシジマくん』の時より関わる人の数は増えているので、そのあたりのバランスを取るのは難しくなりました。ただ、ゼロから積み上げてきた『ウシジマくん』とは違って培ってきたベースがある分楽なのは確かです。目の前のことを一つずつ楽しんでいると、自然と力のある人が集まって協力してくれるので、すごくいい流れができていると思います。