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《母親を撲殺》「出院後はやはり資格取得を…」「やりたい事の1つが自分流の学校勉強」出院後に山地が送った手紙に書かれた“野望”

『連続殺人犯』より#9

2021/09/06

source : 文春文庫

genre : ライフ, 読書, 社会

note

 もう1つが、working holiday制度を利用して、海外での語学と観光と遊びをいっきにやってみようと思うものです。その前に日本で仕事をして、お金を貯めないといけないのですが……。でも、留学や就労ビザと違って、沢山のお金がいるわけではありませんので、その点で他のビザではない特典ではないかと思います。6ヶ月から1年ですから充実できそうです〉

海外へ行きたい

 03年1月17日、少年院にいる山地から内山さんへ届いた手紙には、出院後に勉強がしたいということと、ワーキングホリデーを利用して海外へ行きたいとの希望が書かれていた。内山さんは振り返る。

「やはり自分が殺人犯であるという自覚があり、人の目が気になっていたようです。そのため、出院後は自分を知る人のいる山口市以外の場所に住むことを考えていました」

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 山地が7月上旬に書いた手紙には次のような記述がある。

〈帰住地については伯父さんから手紙があり「帰住地を私の所にするのは承知できない」とのことでしたので、保護会に行くことになりました。(中略)山口県内が地元ということで、第一に考えていくことになります。しかし、私としては、山口に帰るのはリスクが高いように感じられます。特に地方新聞が動きに乗り出すと、生活にかなりの支障をきたします。まあ、これから色々と決まってくることでしょう〉

仮退院後の5カ月間の保護観察が決まる

 8月、山地は20歳になった。少年院への収容は原則として20歳までとなっている。誕生日前の8月15日に家裁による審判が開かれ、収容が2カ月継続されることになり、仮退院後も5カ月間の保護観察が決まった。審判の場で「母を殺して少年院のドアが開き、成長の登竜門が与えられた」と口にするなど、反省の態度を見せなかったことに対する決定だった。

 そんな山地が少年院を出たのは10月14日。伯父が引き取りを拒んだため、山口県下関市の更生保護施設に入り、自立を目指すことになった。出院の直前、彼は手紙で内山さんに今後の住所と予定を報告している。