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ホスト時代に学んだのは「ススキノは人を信じられないところ」

 ホストの仕事では、人間の様々な面が見えたという。

「お客さんは昼職の女の子が多かったですね。2年ぐらいやったんですけど、ススキノっていう場所は人を信じられないところなんだと教えてもらいました。飲み代のツケが100万ぐらい溜まった女の子に4回か5回飛ばれてしまいました。すべて自分の借金になるので、そのたびに返していくんですけど。お金を返す辛さより、綺麗事を言っているように思われるかもしれませんが、人を信じられないほうが嫌でした。何度も飛ばれて、さすがに向いてないんだと思って、辞めたんです」

 それからは、バイク屋で働いたり、家の修理から引っ越しなど、何でもやる便利屋、ラーメン屋の経営もしたという。

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「ラーメン屋さんは、函館から少し離れた田舎町でやっていたんです。自分で言うのもなんですが、けっこう繁盛していたんですけど、ラーメン食べながら、本読んだり、会計の時にお金を投げてくる人がいたり、そういう行為がどうしても許せなかったんです。我慢しなきゃいけないんですけど、それが理由で店をたたみました」

 ホスト時代、ラーメン店での客とのやり取りなど、吉沢さんの真っ直ぐな人間性が伝わってくる話だった。そのような性格の持ち主が、もっとも人間の生々しさが出る風俗店で働いているというのも何だか不思議な気持ちになってくる。

「お客さんと多くの時間を接するのは私ではなくて、女性ですからね。彼女たちとの関わり方というのが永遠のテーマなんじゃないかなと思っています。失言ひとつでモチベーションを下げてしまうこともありますし、その逆もあります。普段から丁寧にコミュニケーションを取るようにしています」

 様々な仕事を経験した吉沢さんが、この場所にいることが納得できる答えだった。風俗業界での仕事がこれまでで最長の10年であることがわかった気がした。

コロナ後の狸小路。PCR検査センターの看板も… ©八木澤高明

「でも、やっぱり寂しいですね」

 インタビューを終えると、吉沢さんは車にエンジンをかけた。

「ちょっとススキノを走ってみましょうか。うちの店が入っているビルとかを案内しますよ」

 吉沢さんの働いているお店の前で車が止まる。

 パネル式の看板には、空白が目立つ。ぼったくりの店が多かったというビルは輪をかけて白地だらけだった。

 ススキノの外れにあるラブホテル街に車が入った。通りの両側にはラブホテルが建ち並んでいた。

「この通りは、いつもならずらりと、デリヘルのバンなどが並んでいるんですけど、今は2台ぐらいしかないですね」

 私の取材の足しになればと、ススキノの今の様子を教えてくれていた。押し付けがましくない態度に心の中で頭を垂れた。

 ラブホテル街からススキノの中心部に戻ってきた。

「この交差点には、客引きがずらっと立っていて、喧嘩も絶えなかったんですよね。コロナが流行ってから喧嘩も見ていないです。街が静かになって、清々しくなったなという気持ちもあるんです」

 そう言って、しばし間を置いてから、

「でも、やっぱり寂しいですね」

 と、吉沢さんは呟いた。(#3に続く)

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。