昨年7月、新型コロナウイルスの猛威が日本中に知れ渡った頃のこと。日本の繁華街の中でも早々にクラスターが発生したのが、札幌・ススキノだった。現地では「キャバクラ」と呼称されるセクシーパブでの出来事だった。客ひとりを含む12人が感染し、そのほか多数の濃厚接触者にも感染の疑いがもたれるなど、大きな話題となった。
先日閉幕した東京五輪では、マラソン競技も行われた札幌。その夜の街では、コロナ禍の1年間で何が起きていたのか。『娼婦たちから見た日本』(角川文庫)、『青線 売春の記憶を刻む旅』(集英社文庫)の著作で知られるノンフィクション作家・八木澤高明氏が現地を歩いた。(全3回の2回目/#1、#3を読む)
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「出張の人がいなくなったことが一番影響が大きい」
閑散とした通りを眺めながら、ススキノの風俗店従業員・吉沢さんは私の問いかけに、訥々と話し続けてくれた。
――風俗業界の状況はどうですか?
「やっぱり、かなり厳しいですよ。うちのビルに入っている店は、半分になっちゃいました。一番響いたのは出張の人がいなくなっちゃったことじゃないですか。ススキノには出張してくる人をカモにしている風俗店も少なくなかったんですよ。近くに風俗店ばっかりが入った風俗ビルがあるんですけど、そこのビルはまさによそから来た人をカモにするぼったくりの店が多くて有名だったんです。そのビルには40店舗ほどそんな店が入っていて、このコロナで、10店舗ぐらいになってしまいました」
――吉沢さんが働いているお店はどのような店なんですか?
「人妻ヘルスなんですけど、働いている女性は40代から50代です。本当に人妻の方もいますし、そうじゃない人もいます」
コロナの流行でお店にはどのような影響が出ているのだろうか。
「まず女性が10人以上やめました。コロナ前は1日に平均してお客さんが100人ほど来てくださっていたのですが、今ではそんな日は1日もありません」
――そうなると女性の収入は影響が出ていますよね?
「勿論です。コロナ前は女性がお茶を挽いても、昨年の10月までは1日1万円は保証されていたんですけど、それがなくなりました。だいたい1日に25名の女性がお店に出て来ますが、ひとりはお茶を挽いてしまいますね。それで、辞める人が出てしまったんです。それでもコロナ前と売り上げが変わらない女性が2割ぐらいいますね。ちゃんとお客さんを持っている女性は強いです」