1ページ目から読む
2/3ページ目

 しかし、女子高生の自殺願望が急に高まり、別の男性と自殺をするという連絡がありました。止めようとした男性は女子高生の制服から学校を特定し、学校に連絡し、自身でも捜索を始めます。女子高生に「どこにいるの?」と聞いても、なかなか言わなかったのですが、夜になって「富士山麓にいる」との連絡が入りました。そのため、地元の警察署にも電話をします。そのうち、「死ぬのをやめました」との返事も来たのですが、連絡がつきません。その後、富士山麓ではなく、東北地方のスキー場で別の男性と一緒に亡くなった女子高生が発見されたのです。結局、止めることができませんでした。

事件の舞台になった「自殺サイト」も

 かつて、自殺をテーマにした掲示板やチャットが話題になり、そこが事件の舞台にもなってきました。

 1998年12月、メンタルヘルスの相談を受けていた掲示板の管理人で、“ドクター・キリコ”というハンドルネームの男(当時、北海道在住)が、重篤なうつ病患者に対して、青酸カリ入りのカプセルを発送していました。男は、メンタルヘルスの相談に乗りつつ、「死にたい」という声にも耳を傾けていたのです。

ADVERTISEMENT

 重篤なうつ病患者の場合、話を聞くだけでは難しい。男は「いつでも死ねる薬があれば、今でなくてもいい。今は死なない」との思いから、青酸カリ入りのカプセルを送っていたのです。しかし、何人かが飲んでしまい、死亡します。それを知った男も自殺しました。

 2005年には、自殺をテーマにした掲示板で「死にたい」と書き込んでいた男女3人が呼び出され、苦しむ表情を見たいという犯人(当時、大阪府在住、死刑執行済み)の欲望を満たすために利用されたという事件がありました。

 犯人自身は快楽殺人を志向しており、自らのホームページに犯行内容と似ている小説をアップしていました。犯行予告とも取れる内容で、その舞台に利用したのが自殺系掲示板で、自らも集団自殺の志願者だと装いました。そこに集まってきた人を殺害したのです。犠牲になった中には、いじめ被害者とされる男子中学生もいました。

TwitterなどのSNSは、ユーザー数が圧倒的に多い ©iStock.com

時間を共有することで「つながっている」感覚に

 最近では、わざわざ検索して「自殺サイト」の掲示板やチャットを探すという手間を避け、日常的に使っているSNSに気持ちや意見を書き込み、交流するケースが目立っています。

 なぜ、「死にたい」という願望をTwitterに書き込むようになったのでしょうか。それは第一に、監視の目がゆるく、規制が比較的少ないサービスにユーザーは流れるからです。また、自殺に特化した掲示板よりも利用者が圧倒的に多く、返事が期待できるメディアでもあります。そして、返信があった場合、短文のメッセージのやりとりが繰り返されます。それは、お互いが共有している時間なのです。

 時間の共有は、より「つながっている」感覚になっていきます。悩み相談を受け付けている機関や団体は電話相談が中心です。しかし、相談員が慢性的に不足しています。メールやラインでの相談も受け付けていますが、きちんとしたところほど、十分に検討してから返事をします。仮にその内容が適切だとしても、時間を共有している感覚は得られません。そのため、よりよい回答が得られても、寂しさは埋められず、SNSに接点を求めていくのです。