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 今回の事件の犠牲者たちが、どのような理由で死にたがっていたのかは現段階では不明です。しかし、SNSを活用する中で返信が多ければ、犠牲者の中では容疑者への信頼感が高まっていた可能性が高いでしょう。もちろん、ネットで知り合って、実際に会うことのハードルが低い時代になっていることも影響しますが、そこに信頼感が加われば、「ネットの知人」のアパートまでついていっても不思議ではありません。

 今回の事件を受けて、私はかつて取材をした、自殺を考えたことのある人に意見を求めました。反応は様々です。

「一緒に死ぬのと殺されるのは違うので、この事件の犠牲者は不本意だっただろう」との意見がある一方、「結果として死ねたのだからよかったのではないか」「危険と知っていて行ったのだから自業自得」という声も聞かれました。「誰かと一緒に死んだとしても、寂しさは埋まらない」と言っていた人もいます。

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 ただ、前提になっているのは、彼らがいずれも助けを必要としている存在であるという点です。生きづらさを抱えていた20代女性が、「周りの軽い知り合いよりもインターネット掲示板で出会う、私のことを知らない“誰でもない誰か”の方が、よっぽど本音を言いあえてラクだったりすることがある」と語っていたことを思い出します。

送検される事件の容疑者 ©村上庄吾

規制強化では救われない人も

 今回のような事件が起きると、自殺系サイトの規制という話になってきます。これまでも、プロバイダの自主規制という形で、犯罪や自殺を誘発する書き込みがある場合は、削除したり、管理が行き届いていない掲示板は閉鎖することが増えました。現在も自殺をテーマにした掲示板はありますが、より具体的な書き込みは削除される方針です。

 では、こうした事件を防ぐにはどうすればいいのか。インターネット上で自殺の話題ができなくするという規制強化も一案です。しかし、SNSで自殺の話をしたからこそ、最終的に自殺を思いとどまった人は救われません。規制強化によって精神的な居場所を奪われ、より死にたくなってもおかしくはありません。

 外部からは見られないDM(ダイレクト・メッセージ)を監視するのも一つの対策です。2007年11月、SNSのモバゲータウン(現Mobage)にある日記で、「死にたい」と書いていた女子高生が、30代の男に殺害されました。この事件を受けて、モバゲータウンではDMを監視し、危険性のある内容は削除しています。mixiでも自殺関連の投稿は削除される決まりになっていますが、完全に「ふさいで」しまうと、救われない人も出てきます。

 現在、ユーザー数の多いTwitterではDMを監視していませんが、自殺をほのめかすようなメッセージに関しては、機械的に削除するというよりは、注意喚起や専門家につなぐ方法を地道に繰り返していくしかないのではないでしょうか。