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避けられない課題もあって…

「ただ、それでも技術的にはクリアしないといけない課題はあったんです。大きいものとして、手ぶれの補正。どうしても人が歩いて撮影するので手ぶれは避けられない。さらにそれを合成するわけですからね。そこでその手ぶれをうまく補正する必要があった。

 また、これは今後の課題でもあるのですが、今のところはエンジニアがソフトウェア上で自動生成した動画を補正しています。それをリアルタイムで高い精度で自動生成できるようになるのが理想ですね」(政岡さん)

直面せざるを得ない問題である「手ぶれの補正」。試行錯誤が続いている(JR西日本・ブイテック研究所提供)

 現段階でもある程度の精度で自動生成は可能だという。ソフトウェアが素材動画における交差点などの特徴を捉え、同じ特徴を持つ別動画とつなぎ合わせればいいのだ。だが、似たような特徴の交差点だったり、店舗がないただの通路のような場所は難しい。

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「あとは昼と夜を切り替えられるようにできるようにも考えています。合成動画なので、やれることはたくさんある。一時的に使用できないエレベーターがあったらそこを通らないようにするとか、途中にあるお店が変わったらとりあえず画像を上に載せて処理をすることもできます。更新するには店が映る範囲だけ撮影し直せばいいので、最初にいちど歩き回っておけば、その後の手間はだいぶ軽減できますね」(政岡さん)

 

ちなみに撮影は…

 ちなみに、撮影はごく一般的な360度カメラをリュックサックに固定して、スタッフがただただ歩くだけだという。それでも1本の道を往復撮影しなければならず(そうしないとムーンウォーク動画ができてしまう)、さらに歩道が両脇にある道ならばどちらも歩く必要がある。500m四方でも、実際に歩く距離は30kmくらいになるのだとか……。なかなか大変そうな作業だが、特別な技術は不要なので体力さえあれば誰でも撮影ができる、というわけだ。

 

「ターミナル駅の道案内は長年の課題なんです」

 で、この「ミラプス・ガイド」、なんとなく便利そうだということはわかったが、そもそも“事前に撮影”がマスト。どのような場所で実用化していくのだろうか。

「じつは、すでに京都駅や新大阪駅などで実証実験をしているんです。京都駅では駅ビルや駅の周辺を撮影して、合成した動画をホームページなどで公開しています。また、駅員の道案内などにも使えるようにするなど、実際の現場で使ってもらって今後の課題などを洗い出しているところですね」

 

 こう話してくれたのはJR西日本創造本部の柳さん。ブイテック研究所とともに「ミラプス・ガイド」の開発や実用化に取り組んでいる担当者だ。