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「実際、ターミナル駅などでの道案内は鉄道事業者としては長年の課題なんです。これまでは看板誘導や駅員による直接のご案内など、いわばアナログで対応してきました。それをデジタルに変えていく、ということでこの技術に着目しました」(柳さん)

 

 ターミナル駅で道に迷ったら、筆者のようにさまよい歩いてみて記事にしよう、などという人でもなければとにかくそのあたりにいる駅員などに尋ねるはずだ。ただ、たとえば「阪急の梅田駅まで」などという定番の質問ならまだしも、「ホワイティうめだの○○という店」などとなると人によっては知っているけれど人によってはわからない、ということになりかねない。あそこまで複雑で、それも駅の敷地外のこと。駅員ならすべて把握していて当然……とは口が裂けても言えません。

口頭だけで案内しようとしてみると…

 今までの“アナログ”の案内方法ではどうしても限界があった。それを解決してくれるのが、動画で道案内をしてくれる「ミラプス・ガイド」。

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スマホをイメージした縦画面で新大阪での例をもう一度。“アナログ”の限界を解決しつつある(JR西日本・ブイテック研究所提供)

「新大阪や京都での実証実験では、駅員がタブレットを使ってご案内をするときなどに使用しました。とくに大きな課題、使いにくいところがあるといった話は上がっていないのですが、これからもユーザーからのフィードバックをどれだけ集められるか。そして駅はもちろん駅の外、街の中など幅広いところで活用できるようになれば、よりキメの細かい道案内アプリ、ということで大きな可能性があるのではないかと考えています」(柳さん)

 

 筆者はなぜかよく道を尋ねられる機会が多いのだが、確かに口頭だけで案内するのはかなり難しい。まっすぐ行って2本目の交差点を左に曲がってファミマの前、くらいなら良いのだが、だいたい人に道を尋ねる場合はもっとややこしいことが多いのだ。特にターミナル駅ともなると、階段を登ったり降りたりを繰り返すこともあり、言葉での説明は一筋縄ではいかない。

「ですから、究極的には人が、弊社でしたら駅員が目的地まで一緒に付き添うのがベストです。ただそれは現実的ではありません。それにかなり近づけることができるのが、動画による道案内、今回の『ミラプス・ガイド』だと思っています」(柳さん)

「最終的にはアプリやweb上でユーザーが検索するだけで自動で目的地までの動画が生成されて見てもらえるようにできたらいいと思っています。ターミナルや市街地はもちろん、観光地などでも使っていただけるような、道案内ツールになると思います」(政岡さん)

 

30秒で道がわかる時代へ

 ちなみに、大阪駅のようなターミナル駅では単にJR西日本だけが「ミラプス・ガイド」を使います!と宣言したところで役に立たない。というのも、ターミナルの複雑さは一事業者だけでなく複数の鉄道事業者や商業施設などが入り組んでいるが故だからだ。こうした事業者間の垣根を越えてゆくことも、これからは必要になってくるだろう。

 いずれにしても、もう少し早くこの「ミラプス・ガイド」が実用化されてアプリになっていれば、大阪・梅田駅であんなにさまよう必要もなかったに違いない。いま、自分がどこにいても目的地を入力すればそこまでの動画が自動生成されて、30秒程度の早回しで見せてくれる……。シンプルな発想かもしれないが、これが“ダンジョン攻略”の決め手になるかもしれない。

 

写真=鼠入昌史

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