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突然いなくなった最大のライバル

 その弟が野球と異なる道に進むために、やむなく大学の硬式野球部を退部することが決まった。石原にとっては、最大のライバルが突然いなくなったのだ。ショックだった。「弘道が頑張っていたから、俺も頑張れてたんやで……」。弟の夢の続きも背負ってプロ野球選手を目指すことになった。

 そして、迎えた19年のドラフト会議当日。弘道さんは、友達と居酒屋に集まって行方を見守った。「第5巡選択希望選手、広島東洋、石原貴規、捕手、天理大学」。アナウンスが聞こえた瞬間に弘道さんは「ウオー!」と叫んだ。あまりの大声に、店中の冷たい視線を集めてしまったのはやむなし。兄がプロ野球選手になるのだ。ギスギスした時期もあったが、双子の弟としてこれ以上誇らしいことはない。

 大人になったからか、2人の会話も自然と増えるようになった。19年12月に行われた新入団選手発表記者会見には、弘道さんも同席して兄の晴れ舞台を見守った。「近い存在だったのに、急に遠くにいってしまったような感じがします」と弘道さん。カメラマンに頼まれると、双子2人は肩を組んで写真撮影に応じた。そっくりな笑みは、仲良しな双子そのものだった。

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 母・衣津美さんは「高校の寮生活も何とか2人で支え合ってくれるだろうと思っていました。双子で良かった」と振り返る。石原は2年目を迎えた今季に1軍デビューをかなえると、高い守備力を買われて1軍に定着した。しかし、双子というのは、いつまで経っても互いを比べてしまうものだ。弘道さんは、兄の活躍にうれしさとほんの少しの悔しさを感じていると言う。

 プロ野球選手の兄と刺激を受け続ける弟。2人のライバル関係は、いまもなお続いているのだろう。こんな最強な双子、そういない。

河合洋介(スポーツニッポン)

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