1ページ目から読む
2/2ページ目

「一番大事なのは寮のご飯をしっかり食べることだよ」

 プロ入りからここまでどんなことを感じてきたのか、牧原巧捕手に話を聞く機会があった。最初に出てきたのは、コンディション維持の難しさについてだった。「毎日同じコンディションで練習や試合に入らなければならない。気合いでなんとかなっていた高校時代とは違う」と身をもって感じてきたという。今まで体重の増減が激しいということはなかったそうだが、早速プロの洗礼と言わんばかりに、キャンプでグッと体重が落ちた。「これじゃやっていけない」と思い、食事の摂り方に強い意識を持ち始めたという。毎日の激しい運動量に負けないように補食の回数を増やしたり、先輩たちの食事の摂り方を観察してみたり。ファーム施設で調整していた和田毅投手にアドバイスを求めたこともあった。和田投手には「一番大事なのは寮のご飯をしっかり食べることだよ」と言われたという。先輩の助言通り、しっかり食べて、身体作りに取り組んでいる。ちなみに、寮のご飯で一番好きなのはハンバーグ。おばあちゃんちの味に似ているそうだ。

 捕手としては、実戦経験を積みながらステップアップしているところだ。特に「周りを見ること」を課題として取り組んできた。当初は打者を抑えることで精一杯だったというが、ベンチの動きや味方の守備位置、次の打者など、少しずつ周りを見ながら頭の中を整理して勝負に挑めるようになってきたという。スローイングはまだまだ通用しないと感じているそうだが、ブロッキングには少しずつ手応えを感じてきた。課題も成長も日々実感しながら、取り組んでいる。

積極的な打撃が持ち味の牧原巧汰捕手 ©上杉あずさ

 打撃について、吉本亮3軍打撃コーチは「逆方向に大きいのが打てるし、飛ぶ。高卒1年目であれだけ振れるのは魅力」と話していた。ファーストストライクから積極的に振っていけるのが牧原巧捕手の持ち味だったが、本人はちょっと悩んでいるという。プロのレベルを知り、新たなことを学ぶ中で、「考えすぎて、今は積極的に行けていない」と模索中だ。攻守にわたり、プロの世界は考えるべきことが非常に多い。大きく成長するためにも、大変だが大切な時期を過ごしているに違いない。失敗も成功も「引き出しが増えた」と前を向き、自分のスタイルを探っている。ちなみに、時々打席で長谷川勇也選手のような職人の風格を感じることがある牧原巧捕手。「大道コーチにも似ていると言われました。嬉しいです」と話していたが、真っすぐな気持ちも期待感溢れるオーラも楽しみしかない。

ADVERTISEMENT

「質の高い1年にしたい」と目を輝かせていた新人合同自主トレから8か月程経った。掲げていた通り、いやそれ以上の質の高い1年目になっているのではないだろうか。スポーツの熱い夏を越えて、更に燃えていること間違いなし! バッティング手袋も日大藤沢カラーのピンク。母校愛も強い分、母校の先輩や同級生の活躍がより一層、牧原巧捕手の背中を押してくれているはずだ。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2021」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/48260 でHITボタンを押してください。

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。