拓哉にとって沖縄の地元社会は、相互に助け合うつながりとしての「ゆいまーる」とは対極的な過酷なものだった。当時、彼の地元ではリゾート地としての開発計画が頓挫し、廃墟ビルが残された。沖縄を象徴するものとして描かれがちな、ゆいまーるもリゾート地も、彼が生きる世界には存在しないに等しかった。
はじめての土地で彼女をつくる
拓哉は、生活や仕事の場を、地元から名護やゴーパチへと移す過程で、女の子をナンパすることを覚えた。それは、彼が新しい世界に適応するなかで身につけたことだった。拓哉つぶれかけたこと何回もある。
――そんな時どうするの?
拓哉 何もしない、(そのとき)いなぐー[彼女]がいたら、いなぐーと会う。だから、いなぐーいないときはきつい。俺、ナンパとかする人じゃなかったんだよ。「遊んでそう」って言われるのが嫌。実際違うから。出会いがない。昔の名護の友だちとつるむようになってから、ナンパはしだした。
彼はひとりで名護に飛び込んでいった。そこでさまざまな困難にぶつかったときに、話を聞いてくれる彼女はおらず、精神的なきつさをひとりで抱え込むしかなかった。逃げるように飛び出した地元に再び帰ることはできなかった。そこで彼は、気の合う名護の仲間たちとナンパをして彼女をつくることを覚えた。生活環境が大きく変わり、新しい仕事に適応するなかで、彼が身につけたことの1つであった。
――今までつき合ってきた人はどんな人?
拓哉 地元の友だちの紹介。1カ月内地で働いて、いなぐー[彼女]とつき合うため帰ってきた。けど、あっちからふられた、俺は今まで(女の子を)ふったことないよ。(その子のことは)忘れられない。(新しい彼女とその人を)比べてしまうときがある。今は連絡とってない、(今はその彼女には)彼氏がいる。忘れようとするけど、絶対忘れない。ほんとに好きな人は、だんだん好きになる。つき合うのは、寂しさを紛らわすため。誰かそばにいて欲しい。
……
拓哉 (女の人とは)遊びたくない、それなら(女の人に)遊ばれる方がいい。(俺のなかには)浮気はない。どこにでも、いなぐーと行きたい。かわいかったら、自分のいなぐー(を知り合いに)自慢したいさ。「かわいいだろう」って。高校のときの彼女が忘れられない。(今は)彼女は1年以上いない。(エッチは)やれるんだったら、やるけど、好きな子(とするの)が1番好き。
......
拓哉 沖縄の曲が好きで、俺、三線ひけるってば。音楽は、いなぐーが好きって言ったら、(それに)あわせる。