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こんなヒーローを待っていた! ホークスのリチャード、プロ1号逆転満塁弾の舞台裏

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/09/09

囲み取材でも面白エピソードをどんどん披露

 ヒーローインタビューが終わるとペン記者(新聞、雑誌、ウェブ)の囲み取材となる。ちょっとした質問から面白エピソードをどんどん披露してくれる。

 たとえば、一軍昇格の少し前に坊主頭にした話。

「8月の由宇遠征の時に宿舎の布団が合わなかったのか腰を痛めてしまって。その後筑後に戻って自分のベッドで寝れば良くなるだろうと思ったけど、結局ダメで一時リハビリに行ったんです」

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 振り返ると8月22日のタイガース戦から26日のドラゴンズ戦までの二軍戦の出場メンバーに名前がなかった。「けど、そんな休んでる場合じゃないだろ、俺」となって、次の大阪遠征から志願出場した。

「で、遠征先にいつもバリカンを持ち歩いている人がいて……」

 それは現役時代から今もずっと短髪の的山哲也二軍バッテリーコーチ。

「的さん(的山哲也二軍バッテリーコーチ)の部屋に行ったんです。貸してくださいって」

 気合を入れるために髪を刈り上げた。ただ、自分の手でやるのは躊躇したのか、「的さん、お願いします!」とバリカンを握ったのも的山コーチだった。

「もともとがだいぶ長かったから痛テテって何度もなりましたけど」と”断髪式”を振り返り、笑い飛ばした。

 他にも、王貞治会長から「本を読め」と図書カードをプレゼントされた際は、イチロー選手の本と一緒に「元素記号」のぶ厚い参考書も購入した。「表紙がカッコよくて」というまさかのジャケ買い。

「いや、そもそも会長からもらった図書券を使った自分がバカ。記念にとっておかないと!」

 いやいや、ちゃんと買いなさいよ(笑)。王会長はまたプレゼントしてくれるだろうから。

 でも、おバカキャラだけではない。普段から律儀なところもあるし、父親が米国人なので英語もペラペラだ。外国人選手とコミュニケーションを図り、なかでもスチュワート・ジュニアが来日した当初は若手同士ですぐ仲良くなり、異国で寂しい思いをする彼の心の支えになったこともあった。

 今シーズンのホークスは苦しい戦いが続いていた。そのまま秋を迎えてしまいそうなところに、救世主が現れてくれた。

 あの豪快なホームランで勝利に導いてくれるのはもちろん、初ヒットで沸き起こった大拍手。あの雰囲気こそホークスに必要なものだった。

 この一体感を大切にして突き進んでいけば、嬉しい秋をまた味わえるはずだ。多少苦しむ時期はあるかもしれない。そんな時は辛抱しよう。首脳陣の皆様も、どうそよしなに。

◆ ◆ ◆

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